◆気になる(オールド)ニュース (2000年)
◎表紙ページに随時掲載している「気になるニュース」の2000年分です。
運輸省外郭団体、洋上での風力発電を提案(00/12/27)

 運輸省の外郭団体「沿岸開発技術研究センター」は、防波堤やメガフロートを利用して、沿岸ないし洋上で風力発電を行う技術マニュアルをまとめた。
 風力発電は、二酸化炭素や放射性廃棄物を発生しない“クリーンな”発電方法として、ここ数年、世界的に注目されている。しかし、まとまった電力を得るには通常の発電施設の数十倍の敷地を必要とする上に、風切り音がうるさく騒音問題を引き起こすため、日本ではあまり普及していない。世界最大の風力発電大国であるドイツが偏西風を利用して350万kW(1999)の電力を生み出しているのに対して、日本は、北海道苫前町に日本最大の風力発電施設がオープンして、ようやく10万kWを越えたばかりである。原子力発電に対する反感が根強く、太陽光発電や燃料電池が高コストという問題を抱えている現在、デンマーク製の比較的安価な発電装置が利用できる風力発電への期待は大きいものの、コンスタントに強風の吹く広大な土地を確保することが難しいため、これまでは都市用の電力源にはならないという見方が強かった。防波堤やメガフロートに風力発電施設を建設する技術は、こうした冷ややかな見方を一変するだけに、積極的に推進してほしい。
【参考】再生可能エネルギー
チェルノブイリ原発、ついに完全閉鎖(00/12/15)

 1986年4月26日に史上最悪の原発事故を起こしたチェルノブイリ原発は、事故後14年間にわたって3号炉での発電を続けてきたが、危険性を憂慮する西側諸国の度重なる要請と代替原発建設費用として20億ドル以上の資金援助を受けて、15日に原子炉が停止され完全閉鎖されることになった。しかし、これで問題が解決したわけではなく、原子炉に残された大量の放射性廃棄物の処理、ロシアなどでまだ13基稼働しているチェルノブイリ型原子炉の扱い、チェルノブイリ原発に勤務していた数千人の従業員の再雇用など、多くの難問が山積している。事故の被害と共産主義体制の崩壊で経済的に疲弊しているウクライナやベラルーシに対して、積極的な国際援助が望まれる。
 チェルノブイリ原発事故は、安全性に欠けていたソ連特有の黒鉛炉の欠陥に起因するものであり、同様の暴走・爆発事故がウェスティングハウスやGE製の軽水炉で発生するとは考えにくい。しかし、原子炉に必然的に蓄積されていく強い放射能を帯びた分裂生成物(死の灰)が外部に放出されたときの被害は、原子炉のタイプによらず、常に悲惨なものになる。実際、1979年のスリーマイル島原発事故の際に原子炉容器の底が抜けていれば、同じような被害がペンシルバニア州を襲ったはずである。チェルノブイリの教訓が示しているように、放射能汚染は国境を越えて拡がっていく。現在、アジア諸国(日本・韓国・台湾・中国・インドなど)で増設が続いている原子力発電所に対して、われわれは厳しい監視の目を向けていくべきである。
【参考】人間因子の問題
家庭用パソコンもリサイクルへ(00/11/30付日経新聞より)

 2000年4月から施行される資源有効利用促進法に基づいて、家庭用パソコンもメーカーによる回収・再資源化が義務づけられそうだ。これに伴い、NECが回収拠点を増設するのを始め、日本IBMなど大手メーカーがパソコンのリサイクル体制を強化している。すでにテレビや冷蔵庫など家電4品目を廃棄する際に消費者が負担する料金の額が家電各社から発表されているが、パソコンの場合、3000〜4000円は必要だとメーカーが主張しているのに対し、「ライフサイクルが短い割に高すぎる」と消費者団体が批判している。
 従来、メーカーは、製品が使用されている期間の品質や安全性に対して責任を持つものの、廃棄後に関しては責任を負わないとされていた。しかし、環境問題が深刻になるにつれて、廃棄後までメーカーが責任を持つべきだという見方が広まっている。こうした義務を負わされた場合、メーカーは自主的に「リサイクルしやすい」設計を行い、製品知識を活用した再商品化を進めるようになるため、消費者や自治体よりもはるかに効率的である。メーカーにとっては過剰な負担にもなりかねないが、持続可能な社会を実現するためには、好ましい方式と言えよう。
【参考】拡大生産者責任
トラック業者を環境格付け(00/11/22日付日経新聞より)

 運輸省は、トラック運送事業者が環境問題にどれだけ配慮しているかを評価し、格付けする制度を立ち上げる。企業の環境管理を評価する認証制度としては、国際規格の「ISO14001」がよく知られているが、中小業者の多いトラック業界では、厳しい要求水準と審査の手間を嫌って、資格を取得している企業は全体の0.05%にすぎない。このため、低公害車の導入やアイドリングストップなど、比較的取り組みやすいガイドラインを作って採点し、優良業者は、官公庁への物品の配送の際に優遇する方針だという。
 「環境経営」は各企業が推進しなければならない重要な課題であることが認識されながらも、「経営環境」が厳しい中で、どうしても後回しにされがちである。環境対策を徹底させれば、再生品の販売や公害裁判の回避などによって利益を上げることも不可能ではないが、初期段階では、環境投資がかさんで経営を圧迫する。このため、企業を環境問題に対して前向きにさせるには、政策によって何らかのインセンティブを生み出さなければならない。今回の運輸省の試みは、環境に配慮している企業を省庁が優遇する「グリーン調達」の一種であり、中小企業に環境対策を講じさせる上で、多少の効果は期待して良いだろう。ただし、基準の適切さと格付けの公平さをどのように保つか、評価結果を公表するかなど、詰めておかなければならない問題も多い。
【参考】環境経営
円周率はやっぱり3.14?(00/11/14)

 文部省は、11月14日に「2000年度版教育白書」を公表し、2002年度から実施される新指導要領についての見解を示した。そこで、「新指導要領では、小学校の算数で円周率を3と教える」と言われていることを「誤解」とし、「原則3.14で計算するのは現行と変わらない」と強調、新指導要領の意味するところは、「おおよその見積もりを出す場合には、3としてもかまわない」というものだと主張した。
 円周率のπは、職業的に科学的・技術的計算を行っている人には馴染み深いものだが、実践の現場で「π=3.14」と置いて計算することはまずない。理論的な計算の場合には、数値を代入せずにπのままで残しておくことがほとんどである。例えば、電流の値がアンペアを単位として与えられているとき、周辺の磁場を求める際には、真空の透磁率μを、
  μ-1=107/4π
という厳密な形のままで表し、数値に直さないのがふつうである。これは、磁場の計算を行う際に係数にπが現れ、分母のπと打ち消しあって式が簡単になることが多いからである。数値の代入は、理論的な計算を全て終えた後に行うが、その場合は、電卓などを使うので、「π=3.14159265359」のような値が用いられる。
 一方、おおよその見積もりをするときには、状況に応じて適当に近似をする。分母にπがあるとき、1桁の近似で良い場合は「π=3」と置くことが多いが、分子が3で割り切れない場合には、「π=4」で計算しておいて、後で答えを3割弱水増しすることもある。こうしたやり方はπだけではない。何日分かのデータをもとに1時間あたりの数値を見積もるときには、「1日=25時間」と仮定して、データを4倍して100で割ってしまう(余裕があれば、さらに5%水増しする)。「1年=π×1千万秒」というのも、かなり正確な近似である(長期にわたって素粒子実験をするときなどに、実際に用いられる)。
 「π=3.14」という機械的な代入ではなく、近似の程度に応じた柔軟な数値の使い分けができるようになるなら、指導要領の改訂にも意味がある。しかし、おそらく小学校教育の現場では、そこまでは教えきれないだろう。それよりは、とりあえず「π=3.14」と教えておいて、中学生の段階で近似と誤差について学ばせた方が効果的だと思うが、いかがだろうか。
IPCC、温暖化予測を上方修正(00/11/04)

 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の作業部会は、2100年までに地球の平均気温が1.5-6℃上昇するという報告をまとめた。これまでの予測では、1-3.5℃の温度上昇とされていたが、太陽光を反射して地球を冷却する効果のあるイオウ酸化物の排出量が従来の見通しより少ないと考えられるようになったため、値が上方修正された。世界各地で酸性雨や健康被害をもたらしているイオウ酸化物の排出量の低減自体は好ましいことだが、地球温暖化を促進するという皮肉な結果をもたらした訳である。
 地球温暖化に伴う気候変動は、21世紀における最大の環境問題だと考えられている。気温上昇が1℃程度でとどまれば、灌漑施設の拡充などで対応できるだろう。2℃の上昇はかなり深刻な事態をもたらすが、世界的な協力体制が実現すれば、飢饉の続発や感染病の蔓延を抑制することも可能かもしれない。しかし、3℃以上気温が上昇すれば、多くの国で農業が壊滅的なダメージを受け、食物の確保を巡って地域紛争が多発し、産業文明の基礎が揺らぎかねない。もし6℃の気温上昇が現実のものとなると、人類滅亡の可能性を真剣に考える必要がでてくる。現時点で差し迫った危機ではないだけに、この問題に対するアメリカや日本での取り組みは遅れ気味で、温暖化ガスの削減を定めた京都議定書の目標も実現できそうにない状況にあるが、事態はすでにのっぴきならないところまで来ている。
【参考】地球温暖化
米ナップスター社、音楽無料交換の中止も(00/11/01)

 インターネット・ユーザ間でCDからコピーした音楽ファイル(MP3フォーマット)を自由に交換できる「ナップスター」というソフトを開発して物議を醸した米ナップスター社が、独ベルテルスマン社と提携して会費制の音楽交換事業を始めると発表した。これまで、音楽各社から「ナップスターのサービスは著作権侵害」として訴訟を起こされ、2000年7月には北カリフォルニア連邦地裁で業務差し止めの仮決定が出されたナップスター社だが、今回の提携は、有料のファイル交換サービスに事業方針を転換するための布石だと見られる。
 ナップスターによるファイル交換のやり方は、インターネットが無法地帯であることを如実に示している。国際的に標準化された著作権の考え方によれば、音楽CDなどのコピーは家庭などで個人的に再生する範囲ならば権利侵害に当たらないとされている。しかし、ナップスターの場合、見ず知らずの相手がハードディスクからファイルをコピーしていくというシステムになっており、たとえ金銭の授受がないとは言っても、容認できる範囲を明らかに逸脱している。さらに事態を深刻にしているのは、ひとたびこうしたサービスが始まると、誰もその拡大を止めることはできないという点である。ナップスターの場合は、音楽ファイルの検索を行うのにナップスター社のサーバを必要とするので業務停止を命じることも可能だが、その後に開発されたグヌーテラというソフトでは、大型サーバを使わず、単に不特定多数のユーザ同士がファイルを勝手に交換するシステムになっているので、“上から”制御することは困難である。今や、著作権の管理法を抜本的に見直さなければならないところまで事態は進んでいる。
【参考】ネット犯罪
杉並病で区が『安全宣言』(00/10/25)

 東京都杉並区井草のゴミ圧縮施設(杉並中継所)の周辺住民数百人が、1996年の操業以来、悪心・発熱・体の痛み・皮膚の黒ずみや炎症など多様な症状を訴えているいわゆる「杉並病」問題に関して、区は、今年6〜7月に行った環境調査に基づいて、「現在、中継所は周辺環境に特に影響を及ぼしていない」という報告を行った。山田・杉並区長は、この報告を受けて、「中継所の安全性が確認された」という事実上の『安全宣言』を出した。これに対して、健康被害を訴える住民団体は反発している。
 杉並病の原因物質はいまだに特定されていないが、中継所から放出されているさまざまな化学物質のいずれかに感作されて、化学物質過敏症になったと推測する者も多い。ひとたび過敏症になると、その後は、安全基準を遥かに下回るごく微量の物質に接しただけで、アレルギーに類似したさまざまな症状が現れる。また、原因物質は1つではなく、患者ごとに異なっている可能性もある。今回の安全宣言は、「化学物質の排出量は全て法令基準以下に抑えられている」ことを根拠としており、化学物質過敏症の実状を無視するものと言わざるを得ない。
【参考】低レベル環境汚染
ダイオキシンは微量でも胎児に影響(00/10/14)

 妊娠中にダイオキシンを摂取した場合、一部が胎児に移行して、ごく微量でも甲状腺機能や生殖器に影響を与えることが、国立環境研究所の研究グループによる動物実験(ラット)で判明した。人間の場合にどうなるかは明らかではないが、胎児期における甲状腺ホルモンの異常は、新生児の知能や運動能力を低下させる危険性があるだけに、恐ろしいデータである。ダイオキシンは、水に溶けず脂質に対する親和性を持つので、体脂肪に濃縮して長期間にわたって生体に悪影響を及ぼすことが知られているが、今回の実験は、その魔手が次の世代にまで及ぶことを示唆するもので、欧米に比べてダイオキシン汚染が進んでいる日本では、特に深刻に受け止めなければならない。
 32年前に起きたカネミ油症事件では、PCBやダイオキシン類に汚染された食用油を摂取して重い中毒症状を示していた女性が、妊娠・出産を経て病状が軽くなったものの、子供は産まれながらにして胎児性油症を患っていたという悲劇が報告された。親の世代が作り出した負の遺産に子供たちが苦しめられることは、何としても回避するべきである。
【参考】PCB/焼却・埋立処理の弊害
ジャック・キルビー氏、ノーベル物理学賞を受賞(00/10/12)

 久々の日本人受賞が話題になったノーベル賞だが、ICを発明した米テキサス・インスツルメンツ(TI)社顧問ジャック・キルビーが物理学賞を受賞したことも、気になるニュースである。キルビーは、ヘッドハンティングされてTIに入社してまもない1958年の夏、1つの半導体基板上に複数の素子を載せて回路を構成するアイデアを思いつき、他の社員がバカンスを取っている間に、世界最初のICとなる発信器を一人で作り上げる(この装置は、スミソニアン博物館に展示されている)。この発明は、一部の軍事技術者の関心を引くが、動作が不安定な上に量産が難しかったため、大量生産は行われなかった。この問題を解決したのが、フェアチャイルド社でキルビーとは独立にICを構想していたロバート・ノイスで、1959年にプレーナ技術(表面を平坦に保ったまま素子を形成する技術)とエピタキシャル技術(一定の結晶軸を持つシリコン結晶を成長させる技術)を組み合わせてデバイスを製造する方法を開発した。こんにちのICは、ノイスの技法を改良した方法で製造されている。その後、キルビーとノイスの間でIC特許を巡る訴訟合戦が繰り広げられるが、クロスライセンスが取り交わされ、現在では、二人ともICの発明者として認められている。
 ICのような技術的発明は、基礎科学での業績を顕彰するノーベル賞には馴染まないと思われていたが、選考委員会は、その社会的影響の大きさも考慮して、今回の授賞を決定したようである。ただし、もう一人の発明者であるノイスがすでに物故しており、TIが高額な特許使用料を半導体各社に要求したために何かと話題になったキルビーが受賞したことに、いささか複雑な感情を抱かざるを得ない。
【参考】知的財産を守る
電子商取引、消費者保護へ新法を検討(00/10/06)

 インターネットを利用した個人向け電子商取引に関して、通産省は、消費者保護のための「電子商取引契約法」の法案作りに着手した。ネット通販は急速に普及しつつあるが、それに伴ってトラブルも急増しており、国民生活センターに寄せられた苦情は、96年度の59件から昨年度には710件に増加している。「無料だと思ったら後から料金請求をされた」「操作ミスをして二重に注文してしまった」などの苦情が多い。また、送信内容が相手に伝わったかどうか確認がとれないままで契約が成立することに、不安を感じる人もいる。こうした事態に対処するために、消費者保護の観点から、新しい法律が必要とされた訳である。近く「ワーキング・グループ」を設置し、2001年通常国会での法案提出を目指す。
 インターネットは、電話やファックスを越える影響を流通に与えると言われているが、それは必ずしも好ましい点ばかりではなく、新手の詐欺の横行やデジタルデバイドの深刻化をも招きかねない。経済活性化のために規制緩和が必要な一方で、消費者保護のための規制強化もやむを得ないところだろう。
【参考】ネットワーク犯罪
アメリカ政府、世界特許の構想をWIPOに提案(00/09/25)

 アメリカ政府は、国際的に通用する「世界特許」を創設すべく、WIPO(世界知的所有権機構)に特許に関する条約の改正を提案した。現在、特許は基本的に「属地主義」が採用されており、各国で採用されている制度に基づいて別個に権利を取得しなければ、当該国内での特許権が行使できない。この手間を軽減するために、国際出願に関する特許協力条約が締結されており、1つの国の特許当局に対して特許権の取得を求める国を指定して出願すれば、国際調査や予備審査を経て各国で特許取得手続きが進められる。しかし、予備審査開始までの手続きが煩雑で、出願者の大きな負担となっていた。アメリカの提案は、これらの手続きを簡素化し、最終的には、指定国制度を廃止して、1国で出願すれば全条約加盟国で通用する「世界特許」を実現しようというものだ。
 産業技術がきわめて高度化しているこんにち、特許権の成否は企業の収益のみならず、1国の産業の将来をも左右する。どのような技術が特許になるかという基準は、各国で微妙に異なっており、きわめて重要な技が、国によって特許になったりならなかったりしているが、そこには、独自の国家戦略を見て取ることができる。例えば、先発明主義を採用し幅広い基本特許を認めているアメリカは、ジェネリック・テクノロジーを創始することによって自国主導で世界の産業を発展させることを国家的な目標としている。特許問題が国際的な紛争の種になっている中で、「世界特許」の構想は、各国の思惑を浮き上がらせることになりそうだ。
【参考】知的財産を守る
セレーラ社、遺伝情報の個人差240万ヶ所突き止める(00/09/14)

 国際共同プロジェクトの「ヒトゲノム計画」を出し抜いて6月にゲノムの解読完了を宣言したことで知られる米バイオ企業セレーラ・ジェノミクス社は、今度は、1塩基変異多型(SNP)の場所を240万ヶ所特定したと発表した。人間のSNPは約300万ヶ所あると推定されており、国際ヒトゲノム計画で解明された40万ヶ所と併せると、その大半が明らかになった訳である。SNPは、遺伝子の塩基配列のうち1つだけが欠けたり別の塩基で置き換えられているもので、1遺伝子につき数十人に一人の割合で見られ、高血圧やガンになりやすいといった個人の体質を決める要因になると考えられる。現在の医療では、こうした個人差にあまり配慮しないで医薬品の処方を行っているが、SNPの有無によって薬の効き方や副作用が異なるため、将来的には、治療に先だって遺伝子検査を行い、各人の体質に合わせた「テーラーメード」医療が可能になると期待される。
 セレーラ社は、コンパック社から提供された大型コンピュータなどを活用して遺伝子のデータを高速に解読し、国際ヒトゲノム計画を凌駕する成果を上げているが、そのために要した莫大な先行投資を、遺伝子データを有償で提供することによって回収しようという目論見である。今回のSNPデータも、製薬会社に高額で供与することになると思われるが、良かれ悪しかれ、遺伝子が商売の道具になるバイオビジネスが本格化しつつあることが伺える。
【参考】ヒトゲノムの解読と遺伝子診断
家電回収の消費者負担額決まる(00/09/07)

 2001年4月から家電リサイクル法が施行されるのに伴って、これまで自治体が粗大ゴミとして回収してきた一部の使用済み家電製品は、製造業者が回収・処理を行い、その費用を消費者が負担することになるが、このたび、松下・日立などの大手メーカーが、消費者に請求する金額を発表した。それによると、金額は各メーカーとも共通で、次のようになる。
洗濯機2,400円
テレビ2,700円
エアコン3,500円
冷蔵庫4,600円
この額は、粗大ゴミの費用より割高で、一部消費者の反発を買うかもしれない。しかし、実際に掛かる処理費用は遥かに高く、東京都の試算では、大型冷蔵庫で1万6000円程になるほか、他の製品も上の金額の2-3倍は必要である。これまでは処理費用の大半を税金でまかなっていたが、循環型社会の実現を掲げる政府の方針に従って、メーカーと消費者が負担を分かつことになる訳だ。なお、消費者負担額を決定するに当たって、メーカー側はもう少し高い金額を望んでいたが、廃棄費用が5000円を超すと消費者の反発を招く上に、悪質業者が介入して不法投棄が増える懸念があるため、通産省が5000円以下にすることを強く望み、最終的にメーカーを押し切ったようである。来年4月からは、各メーカーとも、赤字を出しながら泣く泣く古い製品を回収しなければならない。
 ただし、こうしたやり方は、日本の将来を考えると、決して悪いものではない。現在、オフィス向け電化製品で最もリサイクル率が高いとされるのは複写機である。その理由は、複写機の場合は買い取りではなくリース契約が主流で、古いマシンがメーカーに返却されてくるので、あらかじめ「リサイクルしやすく」作っているからである。廃棄家電の回収でメーカーに負担を掛けることにより、メーカーは、自社のために「簡単に分解できて、部品を使い回しできる」ような製品を開発せざるを得なくなる。こうして、結果的に資源の節約が実現できると期待される。
【参考】リサイクルの現状と今後
特定フロンの回収進まず(00/09/02)

 環境庁と通産省が調査したところによると、オゾン層を破壊する特定フロン(CFC)の回収率は、家庭用冷蔵庫で3割弱、カーエアコンで2割に満たないなど、依然として低い水準にとどまっていることがわかった。特定フロンの生産はモントリオール議定書に従って先進国では1995年末までに中止されているが、それ以前に生産されたものが大気中に放出され続けており、その影響で南極上空のオゾンホールはますます拡大しつつある。フロンの破壊処理施設は全国に40施設あり、99年度の処理量は千トンあまりとなっているが、代替フロン(HCFC,HFC)の処分が急増したため、特定フロンに関しては処理量はかえって減少しているという。欧米主要国ではフロンの処理が法的に義務づけられているが、日本はまだ自主性に任されているため、経費のかかる回収に二の足を踏む業者が多いためと考えられる。
 2001年4月から家電リサイクル法が施行され、冷蔵庫とエアコンに関しては、フロンのような有害物質をメーカーが処理しなければならなくなるが、その処理費用はユーザーから徴収することになっている。このため、一般消費者といえどもこの問題から目を背ける訳にはいかない。
【参考】フロン
日本企業、CO2排出権取引に参入(00/08/24)

 大手商社の丸紅は、年内にオーストラリアの企業を買収して植林事業に乗り出す。植林面積は約3万haと日本企業としては最大規模。製紙原料を確保するとともに、森林による二酸化炭素吸収量を排出権として売買する排出権ビジネスに参入する意向だ。この植林地が吸収できるCO2は年間20万トン程度で、出力60万キロワット級石油火力発電所の3ヶ月分の排出量に相当する。このほかにも、三井物産・三菱商事などの商社や製紙会社が、海外の植林事業に着手している。
 1997年に開催された地球温暖化防止京都会議で、2010年頃までに90年水準に対して日本は6%、アメリカは7%のCO2削減を要求された。だが、省エネなどの市民レベルの努力による排出量の抑制には限界があり、両国ともこのままでは目標達成は不可能である。このため、CO2削減を市場原理に委ね、植林事業などで吸収できた分を排出規制を課せられた企業に販売するという「排出権ビジネス」を立ち上げようという動きがアメリカを中心に活発になってきた。現在ルールの策定が進められているが、CO21トンあたり数十ドルで売買できるという試算がある。ただし、ロシアのように産業が停滞して排出枠が余っている国から排出権を買い取るというやり方は、地球規模での温暖化防止に役立たないため、批判が強い。
【参考】地球温暖化
国内初のクローン豚誕生(00/08/17)

 農水省畜産試験場は、国内初の体細胞クローン豚1頭が生まれたと発表した。これは、クローン羊ドリーと同じ技術を用いたもので、細胞核を除いた未受精卵に、ブタ胎児の細胞から取り出した核を注入し、電気刺激を与えて細胞分裂を促すことによって作出した。7月2日にメスの子豚が生まれ、DNA解析などでクローン豚であることが確認されたという。
 日本では、クローン動物の研究は、主に優良な形質を持つ家畜を生産するために進められているが、欧米では、医療技術の開発が主眼となっている。特に、豚の場合は、心臓や肝臓の大きさが似ていることから、人間への異種臓器移植が可能だとされ、遺伝子操作によって超急性拒絶反応が起きないようにした実験動物の開発が進められている。豚のクローニングは、遺伝子操作で作り出した臓器移植用豚を多数作り出すために必要な技術であり、これが実現されたことで、21世紀前半には豚から人間への肝臓・心臓移植が実用的医療になると期待する向きも多い。その一方で、豚から人間への病原体感染の危険性を憂慮する声も上がっている。
【参考】動物の遺伝子操作
白血病に遺伝子治療(00/08/03)

 工業技術院と東京大学の研究グループは、白血病を効果的に治す遺伝子治療技術を開発したと発表した。これは、白血病の大半を占める慢性骨髄性白血病の原因遺伝子に結合し、これを切断するマキシザイムという分子を利用するもの。正常な細胞は傷つけず、副作用がないのが特徴という。動物実験で効果を確認した段階だが、通常は13週までに死亡する白血病細胞を移植したマウスが、13週を越えて生き続けたという。
 遺伝子治療は、1990年にADA欠損症の女児に対して世界最初の治療が試みられて以来、すでに3000例を越える臨床実験が行われているが、確固たる効果が認められたのは数例にすぎない。1999年にアメリカで治療中の患者が急死したこともあって、90年代前半に盛り上がった遺伝子治療に対する過大な期待は、急速に萎みつつある。しかし、この技術が21世紀の重要な医療となることは間違いない。性急に臨床治療を行うよりも、地道な基礎研究を続けていくことが必要だろう。
【参考】遺伝子操作による医療
メーカーに廃車回収・再利用を義務づけ(00/07/28)

産業構造審議会(通産相の諮問機関)は、使用済み自動車のリサイクルを促進する方法についての検討を進め、来年初めにも結論をまとめる予定。日本では、年間400-500万台の廃車が発生しているが、このうち75%(重量比)が原材料としてリサイクルされ、残りが廃棄物として処分(一部不法投棄)されている。リサイクル率をいかにして高めるかが当面の問題であり、メーカーに廃車の回収や部品の再利用を義務づけることや、処理費用をあらかじめ徴収するデポジット制度の導入する案などが浮上している。EUでは、メーカーに廃車回収を義務づける指令が9月に成立する見通しであり、1台当たり2万5千円の負担増になるという試算もある。
こうしたやり方に対して、メーカーに過剰な負担を課すという批判もあるが、製品の処分・再利用に関して専門的な知識を有する者にリサイクルの実行を求め、その費用を必要に応じてユーザーに転嫁するという方式が、最も合理的だと考えられる。
【参考】インバース・マニュファクチャリング
PCB使用のトランスなど、4900台紛失(00/07/17)

厚生省の全国調査によると、強い毒性を有するため製造が禁止されているポリ塩化ビフェニル(PCB)を高濃度で含むトランスやコンデンサーの廃棄物は1998年末時点で22万台に上り、6年前と比較して2倍になっていることが判明した。また、6年前に保管が確認されたもののうち、4%にあたる4900台が紛失していたこともわかり、厚生省は、保管事業者に対する指導を強化するように都道府県に指示した。PCBは、1970年頃まで世界的に大量に使用された化学物質で、絶縁油・潤滑油としてきわめて優れた性質を持つ。しかし、その一方で生物の体内に濃縮され、分解されずに毒性を発揮することがわかり、日本では1972年に製造禁止となった。しかし、焼却すると猛毒のダイオキシンを発生することから処理が進まず、PCBを含む膨大な機器が技術文明の「負の遺産」として保管されているのが現状である。今後は、ダイオキシンを発生しない「触媒法」によって少しずつ分解していかなければならないのだが、処理費用がかさむため多くの事業者が二の足を踏んでいるという。
【参考】PCB
ウィルス/ハッカー被害、170兆円に(00/07/08)

アメリカの調査機関インフォーメーションウィーク・リサーチ社によると、コンピュータ・ウィルスやハッカー(クラッカー)攻撃で世界の大企業が被る被害額は、今年1年で1兆6千億ドル(約170兆円)に上る見通しだという。これは、主にコンピュータが停止したことによる事業機会の喪失によるもので、世界中で約4万人分の年間労働に相当する生産性が失われるとしている。アメリカでは、1990年代前半からコンピュータをターゲットとする「サイバーテロ」への懸念が高まり、大統領が対策の必要性を訴えるまでになっていたが、一昨年頃から不安が現実のものとなったようである。これまでのところ、明確な政治的意図を持ったテロは少なく、愉快犯ないし経済事犯のケースが多い。今年5月に世界中に蔓延して150億ドルとも言われる被害を出した「I LOVE YOU」ウィルスも、フィリピンの青年たちが面白半分に作り出したようだ。だが、政治テロとなると、単にコンピュータの停止やデータの喪失だけではすまず、管制システムに侵入して航空機事故を引き起こすといった事態も考えられる。日本は、サイバーテロに対する備えがきわめて脆弱であることが知られているので、早急に対策を講じるべきだろう。
【参考】IT社会の脆弱さ
ヒトゲノムの解読がほぼ完了(00/06/27)

クリントン大統領は、「人間の設計図」とも言えるヒトゲノム(全遺伝情報)の解読がほぼ完了したと発表、月着陸に匹敵する科学の偉大な成果として讃えた。ヒトゲノム解読は、1990年から公式にスタートした国際共同プロジェクトであるヒトゲノム計画のチームが進めてきたもので、もともとは21世紀初頭に完了する予定だった。しかし、1999年にバイオ・ベンチャーのセレーラ・ジェノミクス(社長:クレイグ・ベンター)が参入してから事態が一変、セレーラは、大量の解析装置を使った物量作戦で、わずか9ヶ月で国際チームを出し抜いて、単独で解読をほぼ成し遂げてしまったのである。セレーラ側がこの成果を6月中に公けにすると表明したため、慌てたヒトゲノム計画の研究者がクリントン大統領を抱き込み、まだ86%程度しか解読できていなかったにもかかわらず、セレーラと相乗りで今回の「解読完了」発表にこぎ着けたというのが実状である。セレーラのデータは国際チームのものに比べてやや杜撰だという批判もあるが、解読ミスは百万分の一以下とされ、充分に実用的である。今後、セレーラは、解読した遺伝子に関する特許を取得した上で、これをデータベース化して有償で製薬会社などに提供し、莫大な先行投資を回収していく方針だが、人間の遺伝子を商売に利用することに対して批判的な学者も多い。
【参考】ヒト遺伝子の解読と検査
新型のVREを国内で確認(00/06/02)

 「最強の抗生物質」と言われたバンコマイシンに耐性を持ち、抵抗力の落ちた人に重い感染症を引き起こすバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の「ブタ型」が国内で初めて確認された。これまで輸入鶏肉から検出されていた「トリ型」とは異なり、ヨーロッパでブタから見つかっていたものと遺伝子型が一致したという。抗生物質が効かない耐性菌は、世界中で深刻な問題を引き起こしており、日本でも院内感染の原因菌として死亡者まで出している。耐性菌が増加傾向を示す背景には、抗生物質の不適切な使用があると言われており、特に、生育を助けるために飼料に混ぜて家畜に与えられる抗生物質は、医療専門家の監視を受けずに大量に使用されるため、薬剤耐性菌を生み出す大きな要因になっている。今回の「ブタ型」VREが抗生物質を与えられたブタの体内で増殖したものかどうかは明らかではなく、従来からいる細菌の遺伝子が突然変異で「ブタ型」と一致しただけの可能性もあるが、耐性菌問題に改めて関心を向ける良いきっかけと言えるだろう。
【参考】抗菌医療
携帯電話の電磁波、法規制へ(00/05/23)

 郵政省は、携帯電話からの電磁波の発生量を法的に規制することを決定した。2001年から電波法を改正して実施する見通しである。規制値としては、1997年に電気通信技術審議会が決定した「体重1kg当たり2W以下」というガイドラインをそのまま採用する。携帯電話のメーカーは、既にこのガイドラインに沿って自主規制を行ってきているので、実質的な影響は小さいが、携帯電話のリスクに対する意識を喚起する効果はありそうだ。
 携帯電話の発する電磁波が熱効果を持っていることは以前から知られているが、発熱量がきわめて微量であるため、身体への悪影響は全くないと考えられてきた。しかし、頭部に密着させて長期間使用した場合、脳の中心部に熱がこもって何らかの身体的影響をもたらす危険性が皆無とは言えない。また、未知の効果によって脳腫瘍をもたらすことがあるのではないかと心配する人もいる。これまでにも、DDTやフロンのように、科学者が「きわめて安全」と宣言しながら後になって危険性が判明したケースがあるだけに、安全性については過剰と思えるほどのチェック体制が必要だろう。
【参考】電磁汚染
「I LOVE YOU」ウィルスの被害深刻に(00/05/06)

「I LOVE YOU」というタイトルの電子メールを通じて感染するコンピュータ・ウィルスが世界で猛威を振るっています。もともとは、フィリピンの青年がイタズラで作ったものらしいのですが、最もユーザの多いマイクロソフト社製の「アウトルック」という電子メール用ソフトを介して全世界に広がり、被害総額が26億ドルを越える史上最悪のウィルスになってしまいました。もちろん、ウィルスを作った犯人の責任は重いのですが、それはさておいて、イタズラで作った簡単なマクロプログラムによってかくも甚大な被害を受けてしまうインターネットとは、何と脆弱なシステムかと言いたくなります。本来インターネットは、限られたタイプのデータ(基本的にはテキストデータ)の交換のために構築されたシステムであり、その限りでは安全なものだったにもかかわらず、コンピュータ初心者にも楽しめるようにとマイクロソフト社をはじめとする多くのソフト会社がブラウザ(閲覧ソフト)やメーラー(電子メール用ソフト)にさまざまな付加的機能を盛り込んだために、結果的に外部から個々のコンピュータに勝手な指令を送り込むことまで可能になってしまったというのが今回の騒動の原因です。マイクロソフト社は急遽、対応ソフトをネットで提供しましたが、いかにも泥縄の措置であり、電子商取引の将来にも不安を感じさせる事件です。
【参考】IT社会の脆弱さ
旧ソ連製の原発の老朽化が深刻に(00/04/22付け日経新聞朝刊より)

日経新聞の記事によると、旧ソ連で1970年代に建設された民生用の原発で設備の老朽化が進んでおり、事故や故障が目立ってきているということです。ロシアやウクライナは慢性的な財政難で新規の発電所建設が遅れている上、国内の電力供給が逼迫しており、無理をしてでも運転し続けなければならない状況のようです。1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ原発(爆発した4号炉の隣にある3号炉が稼働中)は2000年中に閉鎖されることになりましたが、同型の黒鉛減速炉がまだ両国内で何基も運転されており、チェルノブイリ事故の主原因となった制御棒の欠陥は改善されたとは言え、再び大きな事故が起きるのではないかと心配する技術者も少なくありません。原発は安全を確保するのに多額の費用がかかるので、西側諸国からの積極的な支援が望まれます。
なお、インタファクス通信などによると、ロシア保健省当局者が、チェルノブイリ事故の処理作業に従事した作業員のうち、これまで3万人以上が死亡(うち38%が自殺)したと明らかにしたそうですが、これは俄には信じがたい数字です。慎重なフォローアップが必要でしょう。
【参考】チェルノブイリ原発事故
ヒトのクローンを禁止する法案を閣議決定(00/04/14)

政府は、クローン人間を禁止する「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律案」を閣議決定しました。この法案は、「人の尊厳の保持、人の生命及び身体の安全の確保並びに社会秩序の維持に重大な影響を与える可能性がある」との理由で、ヒトのクローンを作り出すことを禁止し、違反者に5年以下の懲役か500万円以下の罰金を科しています。クローン人間づくりに関しては、生殖能力を失った人が子供を得る手段として認めても良いのではないかという意見もありますが、遺伝的に特定の人間のコピーを作ることに相当し倫理的な問題が大きいことに加えて、生まれてくる子供が染色体レベルで年をとっており、発ガン確率が高くなるのではないかといった健康面での不安を払拭できないことから、多くの科学者・知識人が批判的な意見を表明していました。ただし、クローン胚の研究は細胞分化について多くの知見を与え、医療面に役立てられるものなので、母胎への移植を行わない初期胚の基礎研究に関しては、届け出を義務づけ、国の指針に適合するものを認めることにしています。
【参考】クローン技術
新キルビー特許裁判で富士通の勝訴確定(00/04/11)

ICの基本特許の1つであるキルビー275特許を巡って富士通とテキサスインストルメンツ(TI)の間で争われてきた訴訟の上告審で、最高裁は「キルビー275特許が無効である」との判断に基づいて、TI側の上告を棄却する判決を言い渡しました。キルビー275特許は、ICの基本構造に関わる1960年のキルビー特許の一部を分割・修正する形で64年に出願された内容を、さらに分割・修正して1971年に出願されたもので、審査が遅れに遅れて1989年に漸く成立しました。1958年に成し遂げられた古い発明であるにもかかわらず、特許の継続期間が出願日に制約されない旧特許法の適用を受けたために、40年以上の歳月を隔てた現在の製品に対して特許使用料を要求できるという奇妙な事態が生じたわけです。今回の最高裁判決は、富士通の製品がキルビー275特許を侵害していないとする下級審の論拠に加えて、特許庁による無効審判が確定していないにもかかわらず特許そのものの無効性を判決の前提とした点に特徴があります。日本の特許制度に関しては、アメリカと比較して広範な基本特許に辛く部分的な改良特許に甘いという点が批判されることもありますが、今回の判決は、基本特許があまりに長生きしすぎたために生じたトラブルを是正するものと言えるでしょう。
【参考】知的財産を守る
環境G8 「京都議定書」の発効時期を明確に定められないまま閉幕(00/04/09)

滋賀県大津市で開催された主要8カ国環境相会合(環境G8)では、地球温暖化対策として温暖化ガスの排出規制を先進国に義務づける「京都議定書」(1997年に京都で開かれた気候変動枠組み条約締約国会議で採択)の発効時期を定めるかどうかが焦点となっていましたが、日本・ヨーロッパが主張していた「2002年までの発効」という案にアメリカが強硬に反対し、結局、共同宣言は、それぞれの見解を併記する曖昧な表現にとどまりました。世界最大の二酸化炭素排出国であるアメリカは、排出規制が経済発展の足枷になるとし、排出権取引の導入や途上国での排出削減を求めていますが、これは「環境を汚す権利を金で買い取る」傲慢な態度のように思われます。
【参考】地球温暖化
家電リサイクル法施行に向けて、利用者が処理費用を前払いする枠組みを郵政省とメーカーが策定中(00/04/07;日経新聞朝刊より)

2001年4月から冷蔵庫・カラーテレビ・エアコン・洗濯機のリサイクルを義務づける家電リサイクル法が施行されます。この法律では、メーカーに回収義務が課せられる一方で、その処理費用は利用者が負担することになっていますが、これまで1000円前後で粗大ゴミとして処分できたものに、5000円〜1万数千円の費用を支払うことになるので、適切な回収・支払い方法が整備されなければ利用者の反発を招きかねません。今回の前払い法は、郵便局で費用を払い込んで「リサイクル券」を受け取り、これを廃棄家電に添付して引取所に出すというものですが、この程度の仕組みでは、違法業者がチラシで呼び込んで安く回収し不法投棄する事態が相次ぐことも予想されます。ドイツでは、あらかじめ廃車費用を販売価格に上乗せしておき、その上で全ての自動車をメーカーが無料で回収するようなシステムを採用していますが、大型家電に関しては、こうした有無を言わさぬやり方の方が効果的ではないでしょうか。
【参考】リサイクルの現状と今後
遺伝子組み換え作物に安全宣言(00/04/06)

米科学アカデミーは、遺伝子組み換え技術を用いて生体内で殺虫剤を産生するようにしたトウモロコシなどに関して、「食べても安全」と結論づける報告書を提出しました。遺伝子組み換え作物については、新たに作られる成分が原因となってアレルギーを引き起こすのではないかとの懸念がありましたが、殺虫剤の成分であるBt剤は人間には有害作用を及ぼさないので、安全だとされたわけです。また、殺虫成分が植物体内に閉じこめられているので、空中散布する従来のやり方よりも周辺環境への影響は小さいと評価されています。しかし、これから遺伝子組み換え作物が作り続けられた場合、不安定な遺伝子がバクテリアなどに水平遺伝で伝えられないか、常時殺虫剤が産生されている環境下における淘汰圧によって耐性昆虫が出現しないか−−といった環境への長期的な影響に関しては、今回の調査データでは明らかにされていません。
【参考】遺伝子組み換え作物
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