◆気になる(オールド)ニュース (2003年)
◎表紙ページに随時掲載している「気になるニュース」の2003年分です。
中華航空機事故でエアバス社への賠償請求棄却(03/12/27)

 1994年、名古屋空港に着陸直前の中華航空エアバス機が墜落、264人が死亡した事故で、遺族ら236人が中華航空とエアバス社に総額196億円の損害賠償を請求していた訴訟に対し、名古屋地裁は、中華航空の重大な過失を認め、50億円の支払いを命じる判決を下したが、エアバス社に対する請求は棄却した。
 この判決は、航空会社に厳しく、機体製造メーカに甘いものだと言える。パイロットの操縦に関して、「墜落の危険があると認識していた」とあるが、操縦不能になって機体が急上昇する以前のパイロット同士の会話にそれほどの切迫感はなく、「乗客の生命財産を安全に運送するという最も基本的な義務を無視した」という主張は、死亡した二人のパイロットに対していささか過酷である。国際線の事故において航空会社が支払う賠償金の限度額を規定した改正ワルソー条約の制限を回避しようとして、同条約の制限が適用されない「重過失行為」に当たるとの結論を無理に導き出したという印象が強い。
 1996年に提出された事故調査委員会の報告書によれば、事故は、パイロットの不適切な操作(ゴーレバーの作動や操縦桿の無理な押し下げなど)と機体設計上の不備(水平安定板と昇降舵の不調和な動きや警報装置の不設置など)が複合して生じたものである。常識的に考えれば、中華航空とエアバス社に同程度の損害賠償を支払わせるのが妥当だろう。
【参考】コンピュータ・クライシス
住基ネット侵入実験の結果発表(03/12/17)

news004.gif  住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の安全性を検証するために、長野県が9-11月に県下の3町村で行った侵入実験の結果が明らかになった。それによると、インターネットから庁内LANに侵入することはファイアウォールに妨げられて失敗したが、無線LANを使って庁内サーバにアクセスし、そこから既存住基システム(住基ネット稼働以前から住民基本台帳のデータを管理しているシステム)に侵入できたほか、ファイアウォールを通過してCS(住基ネットにデータを送信するコミュニケーション・サーバ)に侵入する方法も発見したという。ただし、CSと住基ネット本体の間にあるファイアウォールを破る実験は、不正アクセス禁止法に抵触する恐れがあるため、今回は見送られた。
 住基ネットは、住民票に付けられた11桁のコード番号によって個人情報を一元的に管理し、行政手続きを合理化することを目的とする。しかし、個人情報の漏洩や改竄の危険性を指摘する声もあり、東京都杉並区など参加していない自治体もある。今回の実験結果は、住基ネットのセキュリティがインターネットから簡単に侵入されるほど脆弱ではないものの、ソーシャルハッキング(管理の不備など人間のミスを突いて侵入する行為)などによって庁内LANに入り込めば、個人データを盗み見できることを示している。さらにCSとの間のファイアウォールが通過できるとなると、住基ネットの検索機能を利用して重要人物の住所を調べたり、転出・転入などの個人情報を書き換えたりすることも不可能ではない。「行政手続きの際に住民票の写しが必要なくなる」などの住基ネットのメリットは、一般国民にとってきわめてありがたいものとは言えないだけに、IT専門家が不足している市町村レベルでは、住基ネットにつながる基幹系システムをインターネットや庁内の情報系システムから物理的に切り離すなど、地道なセキュリティ対策を優先させるべきではないか。
【参考】IT社会の脆弱さ
情報収集衛星 打ち上げ失敗(03/11/30)

 宇宙航空研究開発機構は、政府の情報収集衛星を搭載したH2Aロケットの打ち上げに失敗、地上からの指令で機体を爆破した。H2Aロケットは、1998年、99年と失敗が続いたH2ロケットの後継機として開発されたもので、打ち上げコストが100億円以下と比較的安く、これまで5回続けて成功したこともあって、宇宙ビジネスに参入する道を開いたと評価されていた。しかし、今回の失敗は、補助ロケットが切り離せないという初歩的なミスによるもので、「軍事用ミサイルの技術が転用できない」という弱みを言い訳にすることも難しく、技術面での信頼を著しく損なう結果となった。商用衛星の分野では、年間10回程度の打ち上げを成功させている欧州・アメリカ・ロシアに加えて、有人宇宙飛行を成功させたばかりの中国が参入の機会を狙っており、信頼を失った日本が入り込む余地はほとんどないだろう。
 特注した多数の部品を組み合わせて建造する大型ロケットは、自社内の生産ラインで細かな改善を重ねて品質を高めていくという日本的なQCの手法が通用しにくい製品である。部品を製造するメーカと緊密に連絡を取りながら、弱点となりそうな箇所を見いだして適切な対処法を指示するには、技術面での理解力、計画全体を把握する総合力、さらには豊かなコミュニケーション能力も必要となる。残念ながら、日本には、これらの能力を併せ持つ優秀なプロジェクトマネージャが希少だと言わざるを得ない。大型ロケット打ち上げの相次ぐ失敗は、技術のあり方を見直す良い機会になるかもしれない。
迷惑メールの被害拡大(03/11/23)

 受信者の同意なく一方的に宣伝などを送りつける迷惑メールが急増している。国連貿易開発会議が公表した報告書「電子商取引と開発」によると、年初には25%程度だった電子メール全体に占める迷惑メールの割合は、年末までに50%を突破する恐れがあるという(2003年11月21日付日本経済新聞より)。
 日本では、2002年7月から「特定商取引法」と「特定電子メール送信適正化法」によって迷惑メールの規制が行われており、正しい発信アドレスの表示を義務づけているほか、英数字を適当に並べて作った架空アドレスへの宣伝メール送信を禁止している。今年10月には、不特定多数の携帯電話に出会い系サイトの宣伝メールを送信していた男が、宛先不明で返信された大量のメールでプロバイダの接続業務を妨害したとして、偽計業務妨害の容疑で逮捕された。
 EUでは、広告メールの一方的な送信を防ぐため、個人宛に送る際には事前の承諾を得ることを義務づける規制の実現に向けて、各国が国内法の整備を進めている。アメリカ議会では、発信元を隠した宣伝メールを不特定多数に送信することを禁止する法律が上院を通過しており、近いうちに、何らかの規制が導入される見通し。
 メールソフトの設定によって、受信した迷惑メールを即座にゴミ箱行きにすることもできる。マイクロソフト社は、50万に上る特徴をもとに迷惑メールを識別するフィルタリング技術『スマート・スクリーン』を開発、アウトルックなどのメール関連ソフトに搭載する予定だ。しかし、業者側もフィルターを通り抜けるために("PORNO"を"P0RN0"と表記するなど)工夫を凝らしており、終わりのないイタチゴッコになる可能性もある。
【参考】ネット上の悪意
農水省、家畜用抗生物質見直しへ(03/11/16)

 農林水産省は、家畜の成長促進のために使用されている抗生物質(合成抗菌剤を含む)が薬剤耐性菌発生の一因になっている可能性があるとして、飼料安全法で飼料添加物としての使用を認めている抗生物質全てについてリスク評価を実施することを決定した。結果によっては、指定の取り消しもある。
 ある種の抗生物質には、栄養分の吸収率を高めて成長を促進する効果があるため、アメリカや日本では、家畜の飼料に添加する形で広く使用されている。こうした抗生物質は、病気の際にのみ投与される医薬品と異なり、長期にわたって低用量で連続的に使用されるため、ダーウィン流の選択を通じて耐性菌が生き残る環境が形成されやすい。耐性菌が繁殖している食肉を充分に加熱せずに食べた場合は、人間に感染する危険もある。実際、アメリカでは、食用の鶏肉から抗生物質キノロンに耐性を持つ耐性菌が検出されており、人間に感染したとおぼしき事例も報告されている。
 このような事態を受けて、EUでは、2006年までに成長促進のための抗生物質の使用を段階的に廃止していく方針が決められた。抗生物質信仰の根強いアメリカでも、今年6月にマクドナルド社が、人間用医薬品と共通する抗生物質の使用中止を食肉供給者に求める通達を出している。家畜用抗生物質が人間にもたらすリスクの大きさは必ずしも解明されたわけではなく、その使用中止が家畜の健康を損ない供給を不安定にする可能性もあるが、医療現場に見られる耐性菌問題の深刻さを考えれば、早いうちに対策を講じるのが好ましいだろう。
【参考】抗菌医療
日本のITランキングは?(03/11/05)

 国連が発表した国別の「電子政府ランキング」で、日本は、総合評価で18位、主要官庁のホームページ充実度で30位と振るわなかった(11月05日付け日本経済新聞より)。4月に発表されたアクセンチュア社の電子政府進捗度調査結果では、22ヶ国中15位(2003)となっており、申請・届け出のオンライン化が進められていることを認められて前年の17位からやや向上したものの、3年連続トップとなり唯一「サービス変革期」にあると評価されたカナダをはじめ、シンガポール・米国・デンマーク・オーストラリアなど電子政府が「成熟期」にあると評価された10ヶ国よりもランクの低い「活用期」にあると見なされた。政府の「電子政府構築計画」によると、国税の納税や特許の申請などの中央官庁への申請・届け出は2003年度から段階的にオンライン化される予定だが、完全実施は2005年度末までかかる。また、2000年初頭に、日本の官公庁が運営するウェブサイトが軒並み不正アクセスを受け、かなりのページが改竄されたことや、2002年に総務省が試験的に始めた「電子申請・届け出システム」に欠陥があり、電子証明書の偽造が可能だったことに示されるように、セキュリティ対策に不備があるのではとの不安も大きい。
 携帯電話が急速に普及したこともあって、国内にいるとIT先進国だと錯覚しがちだが、さまざまな国際比較のデータは、日本がこの分野で遅れを取っていることを示している。世界経済フォーラムがまとめた「2003年版世界IT報告」のIT競争力ランキングでは、日本は20位(前年21位)に留まっており、シンガポールが8位から3位、台湾が15位から9位、韓国が20位から14位へと、東アジア勢が台頭する中で、日本の停滞ぶりが目立つ。ブロードバンド普及率は10位と健闘しているが、100人あたりの利用者数は7.1人で、トップの韓国(21.3人)の1/3に過ぎない(国際電気通信連合調べ、2002)。インターネットの人口普及率が54.5%と韓国に次いで10位になったとは言うものの、ユーザの15%は携帯電話による簡易サービスしか利用しておらず(平成15年版情報通信白書)、やや水増しされた数値と考えるべきである。
 日本でITの普及が遅れがちのは、“お上”に足を引っ張られている面が少なくない。世界各地で移動電話の利用が始まった頃、国内の通信事業を独占していた電電公社は、公衆電話網の拡充に力を入れていたため、この分野に乗り気ではなく、参入してからも、国際的な標準化の流れを受け入れずに日本独自の方式に固執、結果的に、携帯電話ビジネスで大幅に出遅れることになってしまった。政府や自治体にITを導入する際も、優秀なシステムエンジニアをヘッドハンティングして中途採用するといった積極策になかなか踏み切れないでいる。教育分野でのIT投資も遅れており、1999年の時点でアメリカの公立学校では6人に1台の割合でパソコンが導入されていたのに対して、日本では15人に1台だった(2003年には9.7人に1台に改善)。民間業者だけに限ると、日本のIT競争力はなかなかのものなので、状況の改善には、まず政府や特殊法人内での意識改革が必要だろう。
【参考】デジタル社会の到来
FDA、クローン牛肉の安全性認める(03/11/02)

 米食品医薬品局(FDA)は、クローン動物から得られる食品の安全性に関するリスク・アセスメントの草案を発表した。FDAから調査を委嘱されていた米科学アカデミーの報告に基づくこの草案は、こんにち入手可能な研究データに基づく限り、牛・豚・ヤギのクローンに由来する食品が、非クローン動物からのものと同程度に安全であると主張している。同様の安全性報告は、2003年4月に、厚生労働省の研究班からも提出された。ただし、米科学アカデミーの報告では、安全性についての不安のレベルは低いものの、市民の不安を軽減するために、さらにデータを収集する必要があると結論づけられていた。
 クローン動物は、個々の遺伝子の改変を行わずに体細胞の核を丸ごと移植して作るため、非クローン動物では産生されないタンパク質が作られて新たなアレルゲンとなる危険はほとんどない。しかし、牛と羊のクローンでは、胎仔が巨大になりすぎて難産になるケースが多く、それに伴って水症(hydrops)も頻繁に見られる。巨大化の理由は判明していないが、受精による発生と異なって、遺伝子のリセットが正しく行われていない可能性もある。また、心肺・腎臓・免疫機能の不全も多く、出産の直前・直後に死亡する率は、通常の出産よりも有意に高い。この時期を乗り越えたクローン動物は、先天性の異常で早死にするケースがあるものの、健康に成長することが多い。このため、成長したクローン動物に関しては、「食べても安全」と考える研究者も少なくない。
 しかし、成長したクローン動物に問題がないと結論するわけにはいかない。遺伝子のリセットが不完全で問題が発生する場合、深刻な異常は胎児期〜出産直後に表面化するものの、穏やかな障害が見過ごされている可能性があるからだ。実際、国立感染研究所の報告によれば、クローンマウスは比較的短命であり、免疫力の低下により肺炎を発症しやすくなっているという(Nature Genetics 30(2002)253)。狂牛病の例からもわかるように、動物の感染症が人間に伝染することは稀ではないため、クローン動物の肉やミルクの販売を認める前に、もう少し研究を重ねる必要があるだろう。
【参考】クローン技術
燃料電池の開発競争進む(03/10/13)

 ホンダは、燃料電池車に搭載するスタック(発電用部品)を自社開発したと発表した(10月10日付け日本経済新聞)。同社は、2002年にトヨタとともに世界で初めて燃料電池車のリースを開始したものの、燃料電池本体は、業界最大手のバラード社(カナダ)から調達しており、自社開発に成功しているトヨタやGM、バラードと共同開発を進めてきたダイムラークライスラーに比べて、後れを取っていた。このほか、日産も、将来の自社生産を目指して、ユナイテッド・テクノロジー社(アメリカ)と共同開発を進めている。
 低公害発電装置の切り札的存在といわれる燃料電池は、自動車の動力源・自家用発電機・携帯機器の電源として、熾烈な開発競争が繰り広げられている。しかし、開発コストが巨額になるため、体力のある大企業でなければ自社開発は困難であり、結果的に、業界の再編成を加速することになると見られる。アメリカでは、ブッシュ大統領が「水素社会」の実現を目指すと宣言、5年間で17億ドルの予算を投じて挙国体制での開発に乗り出しており、商用車分野でわずかにリードした日本にとっては最大の脅威だ。鍵となるのは、現在、燃料電池車で1億円、家庭用の発電機で数千万円と言われる製造コストをいかに下げるかである。安全で安価、安定して安心な燃料電池の開発にどこが成功するか、今後の動向を注目したい。
【参考】エネルギー効率の向上
ウィンドウズの欠陥でMS社に集団訴訟(03/10/05)

 ウィンドウズの欠陥により個人情報が流出して損害を被ったとして、米カリフォルニア州でマイクロソフト社を相手に集団訴訟が起こされた(10月03日付け日本経済新聞)。原告弁護人によると、インターネット経由で社会保険番号などが流出したことが、個人情報保護を定めたカリフォルニア州法に違法しているという。
 ウィンドウズのセキュリティホールを狙ったウィルス攻撃や不正アクセスは、跡を絶たない。ウィンドウズがパソコンOSとして圧倒的なシェアを保っており、クラッカーの攻撃対象として狙い撃ちされるためでもあるが、インターネットをデータ交換のメディアとしてだけでなく、ActiveX という技術の下にさまざまなプログラムを実行する場として利用しようとするマイクロソフト社の技術戦略自体に、問題の根があるとも考えられる。
 ウィルス攻撃や不正アクセスによる損害賠償の相手として、特定の難しい実行犯ではなく、セキュリティホールという“欠陥”のあるOSを作ったマイクロソフト社を選ぶことは、製造物責任(PL)の発想が行き渡っている現在、自然な成り行きである。ただし、日本では、ソフトウェアはPL法の適用対象外とされており、この法律に基づく賠償請求は難しい。また、ソフトの使用に際しては、「免責条項(欠陥によって損害が生じたとしても賠償などの責任を免れるとする条項)」を盛り込んだ契約書に同意させられることになっており、損害賠償を得るには、この条項が無効であるという法的根拠を示す必要がある。今回の集団訴訟によって原告が多額の賠償金を手にする可能性は低いと思われるが、ソフトの欠陥を巡る法律家の判断がいかなるものになるか、興味深い。
【参考】IT社会の脆弱さ
米で原発新規建設の動き(03/09/28)

 米国の電力会社2社が、原子力発電所の用地を確保するための「早期用地許可」を原子力規制委員会に承認申請した(09月27日付け日本経済新聞)。民間企業による原発推進の動きとして注目される。
 アメリカでは、1979年のスリーマイル島原発の事故以降、経済性と安全性に難があるとして、原発の新規発注が途絶えていた。しかし、2001年にブッシュ大統領が「国家エネルギー政策」を発表、エネルギー源多様化のために原子力や石炭の利用促進を訴えたことで、公的支援が得られるとの期待が生まれていた。ヨーロッパでも、チェルノブイリ事故をきっかけに(フランス以外の)全欧州で高まりを見せていた反原発運動が退潮し、フィンランドでの原発新設決定、イギリスでの原発推進政策の採択、スウェーデンでの脱原発政策の停滞など、原発を見直す機運が高まっているように見える。エネルギー需要の急増に対応するために原発建設を盛んに進めている東アジア諸国の状況を併せて考えると、世界的に原発推進に向けての流れが強まったようだ。
【参考】原発の経済性・安全性
南極上空のオゾンホールが急拡大(03/09/06)

 気象庁の観測によると、9月1日時点でのオゾンホールの面積は2588万km2で、観測史上最大だった2000年の2918万km2に迫る勢いだという。
 南極上空のオゾン層は、主に、フロン類の一種であるクロロフルオロカーボン(CFC's)によって破壊される。オゾン層が極端に減少した領域であるオゾンホールの存在は、1980年代半ばに発見され、1990年代には、その大きさが増加する傾向にあった。オゾン破壊物質であるフロンは、モントリオール議定書に基づいて、先進国では1996年から生産禁止になっており、1999年頃から大気中濃度の減少傾向が報告されている。オゾンホールの大きさも、これに歩をあわせるように縮小し、2002年には過去10年間で最小となったため、フロン規制の効果によってオゾン層が回復してきたとの見方もあった。しかし、今回の観測結果は、オゾンの破壊量が気象条件に大きく左右されることを示しており、オゾンホールが今後数十年にわたって持続するという従来の予測を裏付けるものである。
 オゾン分子を破壊する遊離塩素は、極成層圏雲内の氷表面で生成される。2002年にオゾンホールが縮小したのは、オゾン層付近の気温が高く極成層圏雲が拡がらなかったためだと推測されるが、今後は、地球温暖化の反動で成層圏の気温は低めに推移すると考えられており、フロンの濃度が減っても、オゾン層破壊の深刻さは続くと見るべきだろう。
【参考】フロン
ゴミ発電所で爆発・火災事故(03/08/23)

 三重県のゴミ発電所でゴミ固形燃料(RDF)を貯蔵するタンクで14日に爆発・火災事故が発生、19日には再度の爆発で消火中の消防士2名が死亡した。火は23日になってもくすぶり続けている。同施設は、2002年12月に稼働したばかりだった。
 RDFを利用した発電は、ダイオキシン対策として国が推進するゴミ処理方法の1つ。多くの自治体では、紙や生ゴミとプラスチック類を分別し、後者は埋立処分にしているが、これは、プラスチックの燃焼による炉の腐食とダイオキシンなどの有毒物質の発生を避けるための措置である。特に、生ゴミとプラスチックを混ぜて焼却すると、生ゴミの水分のせいで部分的に不完全燃焼が起きて、塩素系プラスチックからダイオキシンが発生しやすい。RDFによる発電では、生ゴミやプラスチックを含む雑多なゴミを破砕・乾燥・圧縮してペレット状に加工し、安定した状態で燃焼させることによって不完全燃焼を起こさないようにしている。しかし、乾燥が不十分だと、RDFに含まれる有機物が発酵して発熱し、可燃性のガスが発生する危険もある。今回の事故は、水分を含んだRDFが貯蔵タンクの内壁に付着した状態で発酵が進んだことが原因ではないかと推測される。
 RDFによる発電は、雑多なゴミのサーマルリサイクルを可能にする方法として期待を集めており、ドイツなどで数年前から実用化されているが、さまざまな化学物質が混入した燃料を扱うため、潜在的な危険を避けることが難しい。また、現時点ではエネルギー効率が低く、リサイクルとして機能していないとの見方もある。ゴミ発電所の建設を推進する前に、もう少し技術的改良を進める必要がありそうだ。
【参考】焼却・埋立処理の弊害
海上ミサイル防衛システムは高価なおもちゃ?(03/08/23)

 防衛庁は、北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃に対処するため、アメリカから海上発射型迎撃ミサイルを購入する方針だが、これは1発が20億円にも上る高価な装備であり、批判の声も挙がっている(8月22日付毎日新聞)。
 アメリカのミサイル防衛構想は、主に、弾道ミサイル発射後100秒以内にエンジン噴射を捉えて、迎撃ミサイルか大出力レーザで撃ち落とそうというもの。X線レーザなどによる宇宙空間からの迎撃を想定していた1980年代の「スターウォーズ計画(SDI; 戦略防衛構想)に比べて、より実現性が高いと見られる。しかし、迎撃に許された時間的余裕が短いため、発射基地から数百km以内に迎撃ミサイルを装備した艦船や大出力レーザを搭載した飛行機を多数配備しなければならず、防衛する側の負担はかなり大きい。また、これまでの実験によると、迎撃精度は低く、撃ち落とせなかったミサイルに被弾する危険性が高い。相手国が固体燃料ロケットを開発した場合は、エンジン噴射の時間が短くなるために、迎撃はさらに困難になる。
 アメリカ側は、莫大な開発費の一部を負担してもらうため、北朝鮮の脅威を実際以上に強調して日本に高価な迎撃ミサイルを買わせようとしているが、アメリカの言い値で高価な武器を購入すると、一部の軍事産業を潤すだけという結果になりそうだ。
【参考】「Q&A」より
素粒子の標準理論を越える新発見?(03/08/13)

 高エネルギー加速器研究機構で実験を続けてきたBelleグループは、国際会議のLepton Photon 2003で、従来の標準理論では説明できない現象を見いだしたと発表した。Belleが行っていた実験は、光速近くまで加速した電子と陽電子を正面衝突させて、B中間子と反B中間子を大量に作り出し、その崩壊の仕方を調べることによって、物質と反物質の間のわずかな違い(CP対称性の破れ)を解明しようとするもの。この実験で、B/反B中間子がφ中間子とKs中間子の対に崩壊する68個の事象を調べたところ、非対称度というパラメータで表されるCP対称性の破れの大きさが、標準理論から予測される値とは有意に異なっていた。BがφとKsに崩壊する過程のファインマン図(下図)にはループが現れるが、この部分に未知の粒子が寄与している可能性もある。今回のデータは、誤差が大きく標準理論の破れが確証されたとは言えないため、今後の追試と理論的解明が期待される。
news003.gif
 標準理論は、1960年代にゲルマンやワインバーグらによって研究されたクォーク模型と電弱統一理論を総合したもので、6つのクォークと6つのレプトンが SU(3)×SU(2)×U(1) という対称性を持つヤング・ミルズ場を介して相互作用すると仮定されている。これまで行われたほぼ全ての素粒子実験の結果と合致しており、きわめて信頼性が高い。しかし、素粒子の質量に不自然な階層性があること、アノマリーと呼ばれる量が理由のないまま相殺されていることなど、多くの奇妙な点があり、究極の理論ではなく、あくまで低エネルギーでの有効理論にすぎないと見なされている。標準理論を越える試みは、これまで数多く行われてきたが、実験データの足がかりがないため、成功を収めたとは言い難い。Belleグループによる今回の実験結果は、スーパーカミオカンデなどで見いだされたニュートリノ振動の証拠とともに、研究者がこれから進むべき方向を示唆するものと言えるだろう。
全米レコード協会、音楽の無料交換に対抗策(03/07/29)

 全米レコード協会(RIAA)は、インターネット上で行われている音楽ファイルの無料交換に対する対抗策を強化し、大口ユーザを著作権侵害で提訴する方針を固めた。すでに、接続時のIPアドレスを元に1000人近くの個人名を特定しており、人によっては数億円という莫大な損害賠償請求が行われる可能性もある。
 音楽ファイルの無料交換は、主に、CDから直接コピーしたmp3ファイルを、ファイル交換ソフトを使ってユーザ間で交換するという形で行われる。著作権侵害に問われて経営破綻したNapster社の方式とは異なり、企業のサーバを利用しない個人同士(ピアツーピア)のやりとりであるため、行為そのものを取り締まるのは難しい。今回の提訴は、世界中で数千万人とも言われるファイル交換利用者に対する一種の「見せしめ」だと考えられる。
 WinMXなどのファイル交換ソフトを利用する人は、日本でも、大学生を中心にかなりの数に上ると想像される。音楽ファイルを無料で入手している人の話を聞くと、購入するCDの枚数がかなり減少したという。CD売り上げ不振の一因がファイル交換にあることは確かだろう。ただし、中国の内陸部などCD流通量の少ない地域では、ファイル交換以外に最新の楽曲を手に入れる方法がないという場合もあり、インターネットにおける音楽ファイルのやりとり自体を禁止することは適切ではない。音楽文化普及のために業界主導で無料ソフトを簡単にダウンロードできる仕組みを整える一方で、ロングバージョンの楽曲など確実に課金したいものに関してはコピー防止機能の付いたCDを販売するなど、音楽産業がインターネットと共存するための方途を模索すべきだろう。
【参考】ネットワーク犯罪
複写機リサイクルが黒字化へ(03/07/12)

 トナーカートリッジの再生など複写機部品のリサイクル事業が、黒字転換し始めている(07月11日付け日本経済新聞)。リコーでは、使用済みトナーカートリッジの再生品が、新規投入部品の節約と廃棄コストの削減により、新品よりも低コストで生産できるようになった。また、富士ゼロックスでは、寿命が短い部品だけを交換できるようにモジュール化するなどリサイクルの効率化を図った結果、今年度中に黒字転換する見通しという。
 リコーや富士ゼロックスが環境経営ランキングの常連になっていることからもわかるように、複写機メーカは早くからリサイクル事業に力を入れている。これは、複写機という製品の特殊性によるところが大きい。オフィスやコンビニなどの複写機は、一般にリース契約に基づいて設置されており、比較的短期間で新品にリプレースされる。複写機に求められるのは単純なコピー機能であり、生産機械やコンピュータのように企業活動のノウハウが集約されているわけではないので、新しい製品に置き換えていくことが企業にとって好ましいからである。必然的に、まだ使える中古複写機がメーカに集まってくることになるため、メーカとしては、設計段階から「リサイクルしやすい」製品を心がけなければならない。こうして、複写機は、(サーマルリサイクルまで含めると)リサイクル率が100%近い環境優良製品の代表格になったのである。
 家電リサイクル法や自動車リサイクル法などに見られるように、これからは、「拡大生産者責任」の考えに基づいて、使用後の処理をメーカに委ねるケースが増えてくる。こうした動きは、当面はメーカに新たな負担を掛けることになるものの、「リサイクルしやすい」製品を作るように設計方針をシフトしていけば、結果的に、メーカに利益をもたらすことになるだろう。その際、複写機リサイクルは、一つの見本になるはずである。
【参考】拡大生産者責任
タバコの注意表示を強化(03/07/03)

 財務省は、タバコの箱に印刷されている注意表示を強化する方針を決定した。現在は、「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」とあるのみだが、将来は、肺ガン・心筋梗塞・脳卒中・肺気腫の4つの病名を掲げ、妊婦や未成年者に対する悪影響なども明記する。PL(製造物責任)制度が施行されて以降、予想されるリスクを注意書きに明記するケースは少なくないが、一般向けの製品でこれほど具体的な警告を外箱に記しているのは、今のところ、塩素系洗剤などの「まぜるな危険」表示だけだろう。
 タバコが多大の健康被害を人類にもたらしていることは、否定しがたい。世界保健機関(WHO)によると、タバコ関連の疾患により世界中で年間400万人が死亡しているという。喫煙は、肺ガン・肺気腫・気管支炎の主要原因であるほか、循環器系の疾患とも深くかかわっている。妊婦の喫煙は、流産や胎児の成長阻害の原因となる。親の喫煙が乳幼児突然死症候群と関係しているという報告もある。こうしたことから、WHOは "Tobacco Free Initiative" を掲げてタバコ消費の抑制を訴えている。
 ただし、タバコがないと口寂しくて困るという愛煙家は少なくないだろう。タバコの煙には、一酸化炭素・アセトアルデヒド・ホルムアルデヒド・窒素酸化物(NOx)・ニトロサミン・ベンゾピレンなどの有害物質が含まれているが、こうした成分の多くは、タバコの葉が燃焼する際の化学反応によって生成される。したがって、内蔵した小型ヒーターを使って無害な物質だけを揮発させ、これを吸い口から放出する装置を開発すれば、「代替タバコ」として役に立つのではないだろうか。
爆発音の正体は隕石(03/06/20)

 6月16日午後10時過ぎに北関東一円で聞こえた爆発音は、地震計に記録された衝撃波の波形などから、茨城県上空に飛来した隕石によるものと見られる(隕石が超音速で進行する際には、飛行機と同様に超音波を伴う)。19日には、気象庁が、この隕石と思われる火球が放つ青白い光を捉えた火山監視カメラの映像を公開した。
 地球大気は、直径100m以下の隕石から生物を守るバリアとなっているが、防衛は完璧ではない。燃え尽きずに地面/海面に激突するものや、大気による抵抗が臨界値を上回って空中で爆発するものもある。1908年にシベリア・ツングースカ上空で爆発した直径60mほどの隕石(または彗星のかけら)は、広島型原爆1300個分のエネルギーを放出して2200km2の森林をなぎ倒した。19世紀後半に現在のサウジアラビア上空を通過するのが目撃されたワバール隕石は、直径10m足らずの大きさながら、放出した総エネルギーは原爆7個分になると推測される。ツングースカ級の巨大隕石が地球に衝突する確率は数百年に1回程度だが、ワバール級なら10年に1回ほどである。今回の隕石は、たまたま市街地上空を通過したために、爆発音を耳にして驚いた市民からの報告が相次いだが、実際には、毎年何個も地球に飛来するミニサイズのものでしかない。
東海地震対策の大綱決定(03/05/30)

 政府の中央防災会議は、地震発生時の対応策をまとめた「東海地震対策大綱」を決定した。地震予知に失敗する可能性を想定し、建物の耐震補強などの予防策を盛り込んだのが特徴。
 従来の東海地震対策は、地震が近いと判定され警戒宣言が発令されたときに、交通や産業活動にどのような規制を加えるかを主眼としてきた。しかし、ここで想定されている数時間〜数日前の確度の高い地震予知は、多くの地震学者が「きわめて困難」と考えているものであり、こうした予知を前提とした対策は、机上の空論にすぎない。場合によっては、大きな被害が生じたときに、「地震予知に失敗した」ことが行政側の免罪符として使われかねない。現在の地震学で実現可能な予知とは、「1年以内に地震が発生する確率は5%」といった中長期的な確率予知か、地震発生から地震波が到達するまでの間に警報を鳴らす直前予知のいずれかである。今回の大綱は、予防策の重要性を指摘した点で一歩前進したものと言えるが、行政の迅速な行動を促すためには、発生確率に応じた対策の検討も必要となろう。
ビル緑化を義務づけ(03/05/26)

 国土交通省は、都市環境の改善とヒートアイランド現象の緩和のため、大規模ビル建設の際に敷地の20%以上の緑化を義務づける方針を示した(05月26日付け日本経済新聞)。
 ヒートアイランド現象とは、都市化に伴う熱放出の増加や土地表面の水分量の減少により、都市部の気温が郊外に比べて島状に高くなること。最近100年間で大都市の年平均気温は2〜3℃上昇し、夏に30℃を越える延べ時間は、東京で1980年の168時間から2000年には357時間へと倍増している。東京電力管内では気温が1℃上がるとエアコンの稼働率が高まって電力消費が約166万kW増加、このエネルギー消費に伴う熱放出が温度上昇を促すという悪循環に陥る。この現象は、都市部にスコール並の集中豪雨をもたらし、熱中症患者を増加させる。熱帯地方に生息するハマダラカが繁殖できるほど高温になると、東京でマラリアが流行することもあり得ないわけではない。
 ヒートアイランド現象の防止には、植生の増加が有効である。東京のヒートマップを見ると、皇居・明治神宮・荒川・多摩川などの緑地や河川が熱の吸収源となっていることがわかり、自然のありがたみがはっきりと見て取れる。ただし、ビルの屋上に防水シートを張って園芸用の草花を植えるといった申し訳程度の屋上緑化では、ほとんど効果がないばかりか、水の使用量を増やす上に、ビルを傷める結果になりかねない。背が低く葉を繁茂させる植物、軽量で長持ちする防水施設、ドリップ潅漑法を応用した効率的な給水システム──こうしたものを整えて、はじめて効果的なビル周りの緑化が可能となる。
カーエアコン用フロン、行方不明に?(03/05/12)

 カーエアコン用フロンの処理費に充てられるフロン券の販売枚数(70万枚)と、実際に処理されているフロンの量(フロン券34万枚分)に大きな差のあることが、自動車リサイクル促進センターの調べで分かった(5月11日付読売新聞より)。1996年以前に製造されたカーエアコンで多く使われている特定フロン(CFC)は、オゾン層を破壊する効果があるため、フロン回収破壊法(2002年より施行)によって大気中への放出が禁止されているが、回収処理のシステムが充分に機能していない可能性がある。
 今回判明した差は、ユーザの便宜を図って自動車処理業者がフロン券をあらかじめ購入していた、あるいは、フロン処理が追いつかずにボンベに蓄えられたままになっている−−などの理由で、フロン券の販売と処理費用の請求の間にタイムラグが生じたためかもしれない。しかし、もう一つ考えられるのは、再使用目的で廃棄車両からフロンを回収しているというケースである。カーエアコンは、振動などの影響で冷媒が少しずつ漏出するため、ときどき再充填しなければならない。ところが、旧型カーエアコンで必要となる特定フロンは、すでに生産や輸入が禁止されており、ストックも底をつきかけて、禁止前と比べて何倍もの高値で売買されているのが実状である。廃棄車両から回収して再使用すること自体は違法ではないが、その一部は大気中に漏れ出ることになるので、特定フロンの生産禁止を定めたモントリオール議定書の精神にもとると言えよう。
【参考】フロン
「メバロチン」の後発品発売へ(03/05/02)

 三共製薬の主力商品だった高脂血症薬「メバロチン」の基本特許が2002年10月に切れたのに伴い、中堅医薬品メーカーが同じ成分を含む安価な後発品を7月から発売する運びとなった(03年5月2日付け日本経済新聞より)。「メバロチン」は、国内における三共の医薬品売上高の3割強を占める主力商品であるだけに、業績への影響は大きいと見られる。精製法などに関する周辺特許はまだ有効であるため、三共は後発品メーカーによる特許侵害に目を光らせているという。
 製品当たり数百億円と言われる莫大な先行投資が必要な医薬品開発において、一定期間、市場で独占的な販売権を確保できる特許制度の果たす役割は大きい。規制緩和によって欧米の大企業の進出が進む中で、特許に守られ高収益を上げられる独自製品を開発することは、日本の医薬品メーカーにとって大きな課題である。しかし、その一方で、特許の防壁は、販売価格を高止まりさせ、医療費を押し上げる要因にもなっている。人気医薬品の特許切れに伴って売り出される後発品は、同等の効能を持ちながら価格が低いため、これを積極的に利用することが医療費削減の切り札になるという見方もある。
【参考】知的財産を守る
14番目のビタミン?(03/04/24)

 緑茶や納豆に微量に含まれている「ピロロキノリンキノン(PQQ)」と呼ばれる物質が、ビタミンの一種として作用していることを、理化学研究所の研究員らがマウス実験で確認した。国際的な検証作業で機能が認められれば、1948年に発見された「ビタミンB12」以来の14番目のビタミンとなる(04月24日付け日本経済新聞より)。
news002.gif  PQQは1970年代に酢酸菌から発見され、酸化還元反応の補酵素として知られていた。すでに多くの生理活性が確認されているが、ビタミン(炭水化物・タンパク質・脂質以外で生理機能の維持に欠かせない有機化合物)として認められるには、人体内で不足した場合の影響を明らかにする必要がある。
 ちなみに、これまで知られている13種類のビタミンとは、水溶性ビタミンであるビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6,ビタミンB12,パントテン酸,葉酸,ビオチン,ナイアシン,ビタミンC、脂溶性ビタミンであるビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンKである。

ピロロキノリンキノン〜♪
東電、原発を全て停止(03/04/16)

 東京電力は、2002年8月にトラブル隠しが発覚してから、点検のために各原発を順次停止してきたが、14日に福島第1原発6号機の運転を停止したことにより、同社が運転する原子炉17基が全て止まった。このまま運転が再開されないと、夏場に訪れる需要のピーク時には、原発6-9基分の電力が不足することになり、大規模な停電も予想される。東電は、地域住民に運転再開への理解を求めているが、先行きは楽観できない。
 東電が隠蔽したのは、水流調整用のシュラウドのひび割れなど、安全上ほとんど問題がないとされる軽微な欠陥であり、原子炉を運転する際の維持基準が適切に定められていれば、これほどの大騒ぎにはならなかったはずである。検査・補修のために停止するにしても、運転再開のスケジュールを策定して、大規模な電力不足が生じないようにすべきだったろう。エネルギー安全保障のために原発推進を画策する過程で「原発の安全性は完璧だ」とした国の建前論が、電力会社に非現実的なまでに過剰な保全基準を要求し、結果的に今回の電力危機を招いたとすれば、皮肉な話である。
【参考】原子力
厚労省「体細胞クローン牛は安全」(03/04/13)

 厚生労働省の研究班は、体細胞クローン牛に関して、「食品としての安全性が損なわれるとは考えがたい」とする報告書をまとめた。これは、血液・肉・生乳の成分が一般の牛とほぼ同一であり、餌としてラットに与えた場合にも異常が生じなかったという2002年8月の農水省の研究結果を踏まえたものである。厚労省が諮問する食品安全委員会で安全性が確認されれば、体細胞クローン牛の肉や乳が店頭に並ぶことになるかもしれない。
 医療への応用を考えて、欧米でヒツジやブタのクローンが研究対象になっているのに対して、日本では、世界で最初にウシの体細胞クローンの作出に成功、すでに300頭以上も誕生させている。このように、ウシのクローン作りに熱心になるのは、日本固有の事情がある。現在、日本人に好まれ高値で販売される霜降り牛肉は、限られた系統の牛からしか得られない。畜産業者にとって悩みの種は、高い料金を払って優良な種牛の精液を手に入れても、交配によって生まれた子牛は雌牛の遺伝子を半分受け継ぐため、必ずしも優れた肉質の牛に育つとは限らない点である。ところが、体細胞クローン技術を利用すれば、最高級の肉牛を何頭も再生産することが可能になる。こうした応用を想定して始められた研究であるだけに、商品化への道を拓こうとする意欲はきわめて強い。
 クローン動物は、遺伝子の機能に異常が見られ、多くが胎児の段階か誕生直後に死亡している。生き残った個体は順調に生育する場合が多いが、中には、免疫や心肺機能に異常を示すものも見られるという。たとえ、異常タンパク質の産生が見られなかったとしても、業者の利益を優先して不健康な動物の肉を食べさせようとする発想は、どこかおかしいと言わざるを得ない。
【参考】クローン技術
イラク戦争で劣化ウラン弾使用(03/03/29)

 米中東軍のブルックス作戦副部長は、米英軍がイラク軍攻撃でわずかながら劣化ウラン弾を使用していることを認めた。
 劣化ウラン(depleted uranium)とは、ウラン鉱石から核燃料用のウラン235を分離・濃縮した残りの金属部分で、大半は放射能レベルの低いウラン238だが、他の放射性物質もごく微量に含まれている。比重が鉄の2.5倍もあり、砲弾の弾芯に用いると貫通力が向上する。材料は核廃棄物なので無料、加工が容易ということもあって、対戦車用兵器として湾岸戦争から使用された。
 ここで問題となるのは、劣化ウラン弾の毒性である。劣化ウラン弾は、命中時の熱で酸化ウランの微粒子となって大気中に飛散し、肺から吸飲されたり、汚染された食物を通じて摂取される危険性がある。ウランは鉛などと同じく強い化学毒性があり、腎臓を傷害する。ウランが微量に放出するα線は透過力が弱いために、体外にあるときにはほとんど問題ないが、微粒子が体内に多量に蓄積されると、周囲の細胞を損傷してガンの原因となる。劣化ウラン弾が使用された湾岸戦争(1991)、ボスニア・ヘルツェゴビナ空爆(1994〜95)、ユーゴ・コソボ空爆(1999)の帰還兵や地域住民に「湾岸戦争症候群」「バルカン症候群」と呼ばれる症状(白血病の多発、肝臓・腎臓などの臓器不全、先天性障害児の出産)が見られ、劣化ウランとの関連が取り沙汰されている。現時点では因果関係は究明されておらず、他の化学物質が関与しているとの見方も有力だが、劣化ウラン弾の放射能が何らかの形で影響を及ぼした可能性は否定できない。
 アメリカはイラクが保有する大量破壊兵器を非難しているが、自国が環境汚染をもたらす兵器を使用していることも自覚してほしいものだ。
イラク侵攻にハイテク兵器が威力発揮(03/03/21)

 3月20日に開始された米英軍によるイラク侵攻では、ハイテク兵器が大きな役割を果たしそうだ。
 ハイテク兵器の代表が、GPS衛星ネットワークの電波信号を利用して正確に標的を狙い撃ちするGPS誘導兵器である。GPS誘導兵器は、1999年のコソボ紛争で使用され始め、2001年のアフガニスタン侵攻の際には、使用された爆弾の9割(トン数比)を占めた。ベトナム戦争当時に開発されたレーザー誘導兵器は、濃い煙や埃があると標的を見失ってしまうという欠点があるが、GPS誘導は、悪天候下でも性能が落ちず、誤爆のリスクが小さい(ただし、電波妨害の影響を受けやすい)。最も一般的なGPS誘導兵器の場合、50%の確率で標的地点の半径12m以内に着弾する。また、母機による誘導なしに自力で軌道修正しながら標的に向かっていくので、敵の防空システム圏外から攻撃することも可能になる。JDAM(Joint Direct Attack Munition; 統合直接攻撃弾)と呼ばれる安価な(2万ドル程度)尾翼キットを装着すると、従来型の弾頭がGPSスマート爆弾に変身する。艦載可能なGPS誘導巡航ミサイルは、1000km以上の射程を持つ。
 このほか、分厚いコンクリートを貫通して地下壕をも破壊するGBU28爆弾「バンカーバスター」、半径300m以内の電子機器を破壊する高出力マイクロ波爆弾、JTAGS(早期警戒衛星から弾道ミサイル情報を受信する装置)を利用したミサイル防衛網など、まるでSF映画に出てきそうな新兵器が次々と投入されるという。
 莫大な予算を投じてハイテク兵器を開発し続けるアメリカは、軍事面で、もはや他国の追随を許さない絶対的優位を獲得している。このアンバランスが今後の戦争に何をもたらすか、大いなる不安を禁じ得ない。
【参考文献】M.ピュトレー「戦争を変えるGPS兵器の全貌」(日経サイエンス、2003年4月号p.64)
管制トラブル、航空会社の損害額は10億円(03/03/05)

 3月1日、東京航空交通管制部で航空機のフライトプランを管理するシステムがダウン、全国の空港で一時的に航空機が離陸できなくなった問題で、減収などによる航空大手の損害額は約10億円に上ることが明らかになった(03月05日付け日本経済新聞)。各社は、国などに補償を求めることが可能か検討を始めているという。
 今回のトラブルは、2002年4月のみずほ銀行におけるものと同じく、膨大なプログラム群の一部を変更した直後に生じている。複数のプログラムがデータをやりとりする場合、不正データの処理法やタイミングの取り方に差があるなど、さまざまな理由で“相性の悪い”組み合わせが生まれてしまう。その結果、個々のプログラムをチェックしてもバグは発見できないが、実際に他のプログラムと組み合わせて動かしてみると、異常が発生することもある。こうした事態は(WindowsのようなマルチタスクOSを採用している)家庭用のパソコンでもしばしば見られるが、巨大システムの制御をコンピュータで行っている企業では、事態はより深刻である。実際、プログラムの数が多いときには、可能な組み合わせの総数は爆発的に増える(いわゆる combinatorial explosion)ため、あらゆる状況に対応できる完璧なソフトを作り上げることは現実問題として不可能である。通常の運用では問題なくても、ある特定の操作をしたときに限ってトラブルが表面化することもあり、言葉は悪いが、爆弾を抱えているような状態とも言える。
 「完璧なソフトを作ることは人間業ではできない」という基本的な前提があるために、プログラムが原因のコンピュータ・トラブルに関しては、補償を求めることが難しくなっている。日本のPL(製造物責任)制度ではソフトウェアは対象外とされており、たとえ製品の不良(バグ)によって損害が生じても、PL制度による賠償請求はできない。また、パッケージソフトの使用許諾契約には、損害賠償に関する免責条項が盛り込まれているのが一般的である。ソフト開発を委託する場合は契約内容によるが、通常、プログラムに明白な不良個所がないならば、開発側に賠償責任を負わせることは難しいだろう。今回の管制トラブルの原因はまだ解明されていないが、ソフトに問題があったとすると、補償問題がどうなるか、気になるところである。
【参考】反抗するコンピュータ
環境対策、最優良は日本IBM(03/03/01)

 さまざまな団体が独自の環境格付けを発表しているが、日本IBMの評価が際だっている。
 非営利団体の環境経営格付け機構が、環境情報を積極的に公表している企業86社を対象に、調査票やヒアリング調査に基づいて行った「環境経営格付け評価」では、最高評価が日本IBMで、以下、大阪ガス、キヤノン、リコー、中部電力となっている。トーマツのグループ会社であるトーマツ審査評価機構が362社の環境報告書に基づいて行った9段階評価では、総合格付けで最高評価の「AAA」を獲得したのは日本IBMのみ。「AA」評価は、トヨタ自動車、リコーグループ、ソニー、富士ゼロックス、松下電器産業グループに与えられている。日本経済新聞社が製造業2047社を対象に行ったアンケート調査に基づく環境経営度調査では、日本IBMが総合首位となり、以下、キヤノン、NEC、リコー、松下電器産業、ソニーとなっている。
(03/02/27,03/03/20,02/12/10付け日本経済新聞の記事より)
 地球規模の環境問題が深刻化する中、環境対策の実施は企業の社会的責任になりつつある。消費者や投資家にも、環境優良企業を支援することが求められており、こうした環境格付けは有用な資料となる。
【参考】環境経営
クローン羊ドリー、安楽死(03/02/16)

 ロスリン研究所の発表によると、1996年に生まれた世界初の体細胞クローン哺乳類であるヒツジのドリーが、重度の肺疾患のため、獣医師の判断で安楽死させられたという。
 ヒツジの平均寿命は11〜12歳だが、ドリーは、2002年1月に年老いたヒツジに見られる関節炎を発症しており、今回の肺疾患と考え併せると、何らかの先天的異常により、通常よりも老化が早く進行したと推測される。原因としては、
(1)遺伝子のオン/オフを決めるメチル化のパターンが受精によって生まれた動物と異なっており、正常に機能しない遺伝子があった。
(2)ドリーの場合、細胞の寿命を定める染色体末端のテロメア領域が通常より短い(=細胞として年を取っている)ことが判明しており、誕生時の細胞年齢が細胞核を提供したドナーと同じ6歳だったため、生まれて6年で老衰した。
(3)エネルギー産生の副産物として老化の原因物質である活性酸素を生成するミトコンドリアで、核内遺伝子とのミスマッチに起因する異常が生じた。
などが考えられるが、原因解明は今後の研究に委ねられる。
 クローン動物を誕生させることはできるようになったものの、遺伝子の機能などに関していまだ不明な部分が多く、技術としてはまだまだ未熟である。クローン人間の作成はもちろんのこと、体細胞クローン動物を畜産業に本格的に導入するのは、まだ時期尚早と言うべきだろう。
【参考】クローン技術
宇宙は137億歳で平ら(03/02/12)

 米航空宇宙局(NASA)は、宇宙マイクロ波衛星WMAPが捉えたビッグバン後38万年の宇宙における温度分布を公表した。それによると、現在の宇宙の年齢は137億歳で、大局的構造は平坦だという。
 宇宙の年齢に関しては、前提とする宇宙モデルによって差が生じ、同じ観測データを用いても20億年ほどの開きが生じる。今回発表された137億歳という数値は、宇宙定数とコールドダークマターを仮定した標準的なモデルによるもので、最も古い球状星団の推定年齢130±15億歳と矛盾しないリーズナブルな値である。また、大局的構造が平坦だという結論は、宇宙が自然に平らになることを説明するほとんど唯一の理論であるインフレーション理論(アラン・グースや佐藤勝彦らが独立に提唱した理論)を強く支持する。
 宇宙論は、かつての「桁が合えば良い」という大雑把な学問から、精密科学へと移行する途上にあり、多くの突飛な宇宙モデルが淘汰され、一般相対論と素粒子論に基づく標準的な理論が確立されつつある。今後の課題は、宇宙エネルギーの大半を占めると推定されるダークマターとダークエネルギーの量や起源を明らかにすることだろう。それが済めば、地平線の向こう側を含む全宇宙のトポロジーや、ビッグバン以前のマザーユニバースの有無などについて解明しなければならない。そこまで行くと、「われわれは宇宙をだいぶ理解できた」と胸を張って語れるだろう。
【参考】20世紀の宇宙像
スペースシャトル・コロンビア号が空中分解(03/02/03)

 スペースシャトル・コロンビア号は、2月1日午後、大気圏に再突入してから十数分後に空中分解を起こし、墜落した。乗員7名は全員死亡。事故原因はまだ解明されていないが、打ち上げ直後に燃料タンクの断熱材が剥がれて左翼にぶつかっており、その影響で断熱タイルが損壊して高熱で機体が破損したという見方が有力である。
 スペースシャトルのような往還機にとって、大気圏突入は、打ち上げに匹敵する難関である。使い捨てロケットで使用される小型カプセルとは異なって、複雑な構造を持つ機体を激しい空気摩擦から守るために要求される技術水準は、恐ろしく高い。これまで100回を越える大気圏突入を成功させてきたNASAの驚異的な技術力をもってしても、いまだに小型飛行機並の安全性すら確保されていない。軌道上での機体の点検や応急修理をルーティン化するなど、さらなる安全対策を積み重ねる必要がある。また、使用されている素材の強度や取り付け方に問題があった、あるいは、30回近い飛行で機体の疲労が進んでいたことが大きな要因になっていたとすると、シャトル計画そのものが大幅に見直されることもあり得る。
 スペースシャトルは、現段階では必ずしも経済的にプラスにはなっていないが、大型ステーションが建設され技術者が常駐して実験を行うようになると、新素材開発などの面で大きな成果が得られると期待される(例えば、変換効率の高い球状の太陽電池は、無重量を利用すると容易に製造できるはずである)。早期の運行再開を望む。
【参考】チャレンジャー号爆発事故
もんじゅの設置許可に無効判決(03/01/28)

 高速増殖炉の大型実験炉(原型炉)「もんじゅ」の設置許可無効を求めた住民訴訟の控訴審で、名古屋高裁は、「事故対策の安全審査に重大な誤りがある」として一審判決を取り消し、設置許可を無効した。原発の設置許可取り消しや建設・運転の中止を求める訴訟で住民側が勝訴するのは異例である。
 原子炉内部で生成されるプルトニウムを効率的に再利用する高速増殖炉は、埋蔵量の限られたウラン235を燃料とする通常の原子炉とは異なり、燃料資源が枯渇する心配がほとんどない。このため、長期にわたってエネルギー源を確保するために必要だとする見方もある。しかし、冷却材として水分と爆発的に反応する液体ナトリウムを使用するため、火災事故を引き起こしやすく、安全性を保つ上での技術的ハードルはきわめて高い。すでに、アメリカ・ドイツ・フランスなどでは、安全性・経済性などの面を考慮して開発が断念されている。「もんじゅ」も、1995年にナトリウム漏れ事故を起こして運転が中断されており、2002年12月に改造工事が許可されたばかりだった。
 今回の判決は、「もんじゅ」の安全性を技術面から厳しく判定したもので、炉心崩壊・放射性物質放散の可能性にまで踏み込んでいる。イベント分析の手法を適用すると、高速増殖炉の弱点であるナトリウム絡みのインシデントが起きたとしても、これが炉心崩壊にまで発展する確率は充分に小さいとされる。だが、スリーマイル島原発事故などの事例が示すように、原子炉のような複雑なシステムは、ひとたび定常状態からはずれると、さまざまなトラブルが連鎖的に派生して、ついにはカタストロフィに至ることがある。冷却系に不安材料を抱える高速増殖炉において重大事故のリスクが無視し得ないほど大きいとする判決内容は、おおむね妥当なものと考えられる。
【参考】核燃料サイクルと放射性廃棄物
世界規模でサイバー攻撃(03/01/26)

 アジア地域を中心に世界規模でインターネットの通信障害が発生、インターネットが社会に浸透している韓国では、ネットに接続できない状態が長時間続いて市民生活に大きな影響を与えた。何者かが送り込んだウィルスが増殖して大量のデータを発信、サーバに負荷がかかってダウンしたり、ウィルス遮断の防御プログラムが働いて接続できなくなったものと見られる。
 ウィルスなどを使ったサイバー攻撃の危険性は早くから指摘されているものの、日本を含むインターネット後発国では対策が大幅に遅れている。今回のウィルスは、2001年に大流行したコードレッドと同様に、ネット内部で急激に自己増殖しては無差別にデータ送信するタイプのようだ。直接的なデータ破壊を行わなかったことに加えて、事件が起きたのが週末だったため、企業活動に深刻な影響は出なかったが、犯人に破壊活動を実行する明確な意図があったならば、被害は甚大なものになったと想像される。一般に、セキュリティ強化と利便性の向上はトレードオフの関係にあるため、ITの普及を推進している段階ではサイバーテロ対策が後手に回りやすいが、ネットが社会の中枢的なインフラとしての役割を果たしている現在、多少の不便があってもセキュリティを確実なものにすることが必要である。
【参考】IT社会の脆弱さ
DVDハッカーに無罪判決(03/01/13)

 オスロ市裁判所は、DVDのコピー防止機能を回避するソフトを開発・公開し、コンピュータへの不正侵入に関する法律に違反したとして訴えられていたノルウェーのハッカーに対して、無罪の判決を下した(1月7日)。
 DVDビデオにはCSSという不正コピー防止機構が備わっており、本来は、DVDプレーヤーに組み込まれた解除キーがなければ再生できない。プレーヤーを製造するには高額なロイヤリティを支払ってライセンスを受けることが必要なため、DVDビデオから海賊版を作成するのは困難だと考えられていた。ところが、1999年、今回の被告となったヨハンセン(当時15歳)らノルウェーのハッカーたちが、セキュリティの杜撰なDVDプレーヤーを逆解析して得られたデータを元に、CSSを回避するソフト『DeCSS』を開発、インターネット上で公開してしまう。これを利用すれば、本来はライセンスが得られていないLinux上からもDVDビデオを再生できるようになり、さらには、海賊版の作成も容易となる。
 この判決は、ネット時代に著作権を守ることの難しさを浮き彫りにしている。アメリカ国内にはデジタル・コンテンツの著作権を手厚く保護する『デジタル・ミレニアム著作権法』があり、DeCSSのようなソフトの配布は違法とされる。しかし、ノルウェーをはじめとする多くの国では同様の法律はなく、こうした国からインターネットを通じてコピーソフトが公開された場合、その入手を遮る手だてはない。正規のDVD購入者に対しても特定のDVDプレーヤーの使用を強制する現行の方式には、利用者の便益を損なうとして批判もあり、デジタル著作権を巡る攻防は、激しさを増していきそうな状況である。
【参考】ネットワーク犯罪
◆気になる(オールド)ニュース
◆気になる(オールド)ニュース(2011年)
◆気になる(オールド)ニュース(2010年)
◆気になる(オールド)ニュース(2009年)
◆気になる(オールド)ニュース(2008年)
◆気になる(オールド)ニュース(2007年)
◆気になる(オールド)ニュース(2006年)
◆気になる(オールド)ニュース(2005年)
◆気になる(オールド)ニュース(2004年)
◆気になる(オールド)ニュース(2003年)
◆気になる(オールド)ニュース(2002年)
◆気になる(オールド)ニュース(2001年)
◆気になる(オールド)ニュース(2000年)


©Nobuo YOSHIDA