原 子 力

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概要

 原子力に対する人々の視線の変化は、20世紀における科学技術の位置づけを象徴的に表している。世紀初頭に始まる原子核研究は、「自然界の謎の解明」を目指すアカデミックな学問としての性格を色濃く残していた。しかし、1930年代から40年代にかけてアメリカで原子核研究に携わっていた科学者の多くは、核エネルギー(原子力)が巨大な力を持つことを知って自ら学問の自立性を放棄し、政府と軍が指導する組織的研究に身を投じることになる。政府主導で科学者が動員されたマンハッタン計画では、原爆開発という政治目的がすべてに優先され、一部の科学者が懸念していた死の灰による環境汚染については、故意に過小評価されていた。終戦後、アメリカ政府は、原子力の平和利用として原子力発電の実用化を進めるが、そこには、明確な政治的意図が認められる。現在では、欧米を中心に原子力離れが進んでおり、再生可能なエネルギーへの期待が高まっている。
  1. はじめに
  2. マンハッタン計画(原爆開発の生産性、戦後体制への影響)
  3. 原子力産業の形成(商業原発の始まり、発注ブームの背景)
  4. 【参考】原子力発電の仕組み
  5. 原発の経済性・安全性(経済性/安全性評価)
  6. 核燃料サイクル(放射性廃棄物の処理法、プルトニウム問題)
  7. 原子力施設の事故(TMI/チェルノブイリ原発事故、東海村臨界事故)
  8. 新しいエネルギー源を求めて(太陽電池、風力発電、バイオマス、燃料電池)


©Nobuo YOSHIDA