★★ プチ回答(旧)1 ★★

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質問光ファイバーの断面は円形ですが、四角よりも円形の方が導光効率が良いのでしょうか?【その他】
回答
 光ファイバのことはあまり詳しくありませんが、コアとクラッドの間で屈折率が階段関数型に変化する場合は、導光効率に差があるとは思われません。実際、オプトエレクトロニクスの教科書などでは、断面が矩形の光ファイバも紹介されています。実用化されているファイバがいずれも円形コアを持つのは、おそらく、その方が、芯の周りに結晶を成長させていく方法で容易に作ることができるためでしょう。光ファイバのカタログを見ると、(コアではなく)クラッドが矩形のものなら市販されているようです。

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質問泥にはまって抜けなくなった子の作文を読むと、足が締め付けられる感じがするとあるのですが、泥の中でどのような力が働いているのか図解してください。【古典物理】
回答
 静止している物体に対しては、全体を圧縮する向きに静水圧が加わります。泥水の密度は水の数倍ですから、同じ深さでも水の何倍もの圧力が加わることになり、“締め付けられる感じ”になると思います。ただし、これは、泥から足が抜けにくい原因ではありません。静水圧を全て加え併せた浮力は、アルキメデスの原理に従って排除した流体の重量に等しくなるので、泥水の方がふつうの水よりも大きな浮力を生むからです。足を抜けにくくさせているのは、物体を動かすときに速度と逆向きに生じる粘性抵抗です。
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質問磁力を持つ物質の温度を上げていくと、その磁力が弱くなっていきますが、この過程で温度との間に関数的な関連性はあるのでしょうか? 溶鉱炉に磁石を近づけた場合、加熱されて液状になっている鉄などが磁石によって影響を受けることはないのでしょうか?【古典物理】
回答
 強磁性体に関しては、次のような磁性の理論が知られています。
 強磁性体が自発磁化(外部磁場がなくても生じる磁化)を持つのは、温度がキュリー温度Tc以下の場合です。平均磁場近似を用いると、飽和磁化(絶対零度での磁化)に対する磁化の比をm、キュリー温度に対する絶対温度の比をtと置いたとき、
qa_182.gif   m = tanh(m/t)
という関係式が成り立ちます。これを解くと、右のようなグラフが得られます。実際の強磁性体における磁化はこの法則から少しずれますが、定性的にはほぼ正確だと言えます。
 キュリー温度以上になると、自発磁化は消失して強磁性体は常磁性体に相転移します。このとき、温度Tと帯磁率χ(=磁化/磁場)は、近似的にキュリー・ワイスの法則
  χ = C/(T-Tc)
で与えられます。ただし、Cはキュリー定数と呼ばれる物質に固有な定数です。この式からわかるように、Tが上からTcに近づくにつれて帯磁率は大きくなり、T=Tcのとき無限大となって、磁場がなくても磁化が生じることになります。
 鉄などの強磁性体が外部磁場によって強い磁化を生じるのは、本来は磁区ごとにバラバラになっている自発磁化の向きが、外部磁場を加えたことによってその向きに揃うからです。キュリー温度(鉄では1043[K])以上の高温では、磁石を近づけても、強い磁化は生じません。

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質問マッハ・ツェンダー干渉計について調べています。原理を図などで説明していただけたらと思います。【その他】
回答
 マッハ・ツェンダー干渉計は、2光波干渉計として分類される干渉計の一種です。同じタイプのものとしては、他に、エーテルに対する地球の運動を測定するのに用いられたことで有名なマイケルソン干渉計や、光路の向きによって光路差が生じるかを検証するサグナック干渉計などがあります。
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マッハ・ツェンダー干渉計は、マイケルソン干渉計ほど調整の自由度は多くありませんが、光路の一方に透明媒質を置いて屈折率分布を測定する際などに利用されます。
 別のところで解説したジャマン干渉計も、マッハ・ツェンダー干渉計のヴァリエーションと見なすことができます。

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質問水のなかにショ糖を入れると、液がゆらいで見えるのはなぜですか?【その他】
回答
 ショ糖水溶液の屈折率は、水の1.33よりやや大きく、水100gにショ糖20gを溶かしたときには1.36になります。屈折率は濃度の高いところほど大きな値になるので、完全に溶けて一様な水溶液になっていない場合は、屈折率の大きいところと小さなところがムラになり、液がゆらいでいるように見えるのです。

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質問炭素の同位体C14は崩壊して窒素N14になりますが、植物体内に取り込まれ植物体を構成している分子中のC14は、その原子核部分がN14になり、分子の形成にあずかっている電子はそのままなのでしょうか。【現代物理】
回答
 ベータ崩壊によってC14の原子核から放出される電子は、平均数百keVの運動エネルギーを持っていますが、この値は、軌道電子が持つエネルギーよりも1桁大きくなっています。このため、電子はそのまま原子から飛び去り、相互作用を通じてエネルギーを失ってから別の原子に捕獲されることになります。一方、それまで炭素原子核からのクーロン相互作用の下で特定の状態に置かれていた軌道電子は、原子核の電荷が+eだけ増えた結果として新たな安定軌道へと速やかに遷移します。この電子移動は原子間力を変えるため、さらに原子核も移動して分子構造が変化することになるはずです。

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質問一般人と超能力者の違いは何でしょうか? 超能力者と言われている人を検証する場合、どんな検査をしたらよいのでしょうか? また、どこへ行けば検査をしてもらえるのでしょうか?【その他】
回答
 「超能力」という概念は、正統的な物理学や精神医学では認められていません。そもそも、何をもって「超能力」と呼ぶのか、定義すらはっきりしていないのです。例えば、サヴァン症候群と呼ばれる疾患は、通常の人には不可能と思える異様な能力を患者に与えます──例えば、あるサヴァンの患者は、数を数えるのがやっとなのにもかかわらず、「70年と17日半生きた人は何秒生きたことになるか」と問われて、1分ほどで「22億1050万800秒」と(うるう年まで含めて)正しく返答したそうです──が、これは「超能力」なのでしょうか。現在の精神医学ではサヴァン症候群をもたらす脳の異常は解明されていませんが、多くの学者は、従来の科学的手法の延長線上で理解可能になる「桁外れの通常能力」と信じています。
 一部の研究者は、ESPカードを用いた透視やテレパシーの実験を行っています。しかし、報告された内容を(超能力関係の書籍における引用を通じて)見る限り、統計的な信頼水準(confidence level)が低い、実験のセットアップが多義的である──などの問題があり、「何かが判明した」と言える段階には達していないようです。今の段階では、超能力検査どころか、「超能力が何か」という合意すら形成されていないと考えるべきでしょう。

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質問アインシュタインの重力波仮説に基づいて、惑星の重力波を地球のプレートで受けると地震が起こる、つまり地震は地球による重力波検出現象とは考えられないですか。【現代物理】
回答
 アインシュタインの一般相対論は重力波の存在を予測していますが、この重力波は、現代の最先端技術をもってしても観測するのが不可能に近いほど微弱なものです。比較的強い重力場は、超新星爆発など巨大な質量が短時間で移動する現象が天の川銀河系の内部で起きたような場合に発生しますが、それでも、重力波によって地球上にある数メートルの物体に生じる歪みは、原子のサイズよりも小さくなります(地震の際の地殻の歪みがセンチメートル単位になることを思い起こしてください)。ましてや、惑星という(天文学的スケールから見ると)きわめて小さな質量の物体が、公転速度という(光速と比べると)きわめてゆっくりした速さで動いているだけでは、地殻にかすかな影響すら与えることはできません。
 現在、数kmという巨大なスケールの干渉計を用意し、2つの鏡の間隔のわずかな変化を調べることによって重力波を検出しようという研究が始まっています(別項参照)が、熱雑音によって鏡が振動してしまうため、検出は困難だと見られています。

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質問「直流電源正極 → 電源近くのスイッチ → 電源近くの電球A → 数万km遠方の電球B → 元の電源近くの電球C → 元の電源の負極」というように導線をつなぎスイッチをオンにすると、電球点灯の順序はどのようになりますか? また電源の極性を入れ替えたり交流にした場合、違いはありますか?【古典物理】
回答
 電流は、自由電子が導体中の電場から力を受けて運動する現象です。電場の変化は、最初に状態を変えた地点から周囲に(導体中の)光速で伝わっていくので、素朴に考えれば、電球は、スイッチに近いところから順に点灯していくはずです。
 しかし、実際には、そうした現象を観測するのは困難でしょう。電球が点灯するにはジュール熱の発生を伴う緩和過程が必要となるので、電子がドリフトし始めてから観測にかかるほどの輝度に達するまでには、導線の熱力学的状態に依存するタイムラグがあり、電球の間隔が数km程度では点灯の順序に差を認めるのは難しいはずです。かと言って、質問文にあるような数万kmの長さの導線に電流を流すだけの大出力の電源を用意することは、現実的ではありません。

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質問なぜモノは温めやすくて冷やしづらいのですか?【古典物理】
回答
 熱エネルギーは、エントロピーの高い“クズ”エネルギーであり、燃焼熱やジュール熱、放射熱などの形で他のエネルギー源から簡単に作り出すことができます。こうして得られた熱は、熱力学第0法則によって温度の高い方から低い方へと自然に流れていくので、温めたい物をそこに置くだけで、すぐに加熱することが可能なのです。
 これに対して、物体を環境温度以下に冷やすには、自然な法則に反して、熱を温度の高い方へと移動させなければなりません。そのためには、断熱膨張や断熱消磁など外部からエネルギーを投入して特別な過程を実現させる必要があります。人類が20世紀になるまで冷蔵庫や冷房装置を開発できなかったのも、当然のことかもしれません。

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質問月と地球の上に二人の人が立って一本の棒の両端を持っているとします。地球の人がその棒を押したとき、月の人が力(棒が押される圧力)を感じるのはいつなんでしょう? 生活感覚では即時ですがそれではライトコーンを飛び出してしまうのでしょうか? 光が届くのと同じだけのタイムラグがあるのですか? もしそうなら、棒が収縮するのかな? 単なる同時性の定義の問題? それとも物質を原子の集合に分解して隣の原子を「押す」までにかかる時間を導入すればいいのかな?【現代物理】
回答
 端的に答えると、原子間を力が伝わる速度が光速以下なので、地球上で棒を押してから1秒以上のタイムラグがあって月に伝わります。同様の質問に対してすでに回答していますので、そちらもご覧ください。

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質問光は電磁波の一形態だと聞いたのですが、意味が良くわかりません。電気の粒子が電子で、光の粒子が光子だと思っていたのですが、違うのでしょうか。【古典物理】
回答
 電磁気的な現象は、電磁場と荷電粒子(電荷を持つ粒子)という2つの実体によって担われています。荷電粒子は電磁場を生み出すソースとなり、電磁場は荷電粒子に電磁気的な力(クーロン力やローレンツ力)を作用させて運動状態を変えています。電子は、電荷を持つ代表的な素粒子で、回路を流れる電流の主な担い手です。これ以外にも、陽子やミュー粒子などの荷電粒子があります。一方、古典的なマクスウェル理論によると、電磁場は全空間に遍在する“場”であり、その振動が波として伝わるという特徴を持っています。こうした「電磁波」の中で、波長が数百ナノメートルのものを「光」(可視光)といい、それより波長の短いものを紫外線・X線・γ線、長いものを赤外線・電波と呼んでいます。
 20世紀に入って明らかになったのは、量子力学に従って電磁場を量子化すると、波動性とともに粒子性が現れるということです。電磁場が粒子的な振舞いを示すときの仮想的な担い手を「光子」と呼んでいますが、電磁場が粒子的に振舞うのは、光電効果やコンプトン散乱など(波長が可視光より短い電磁波が関与する)ごく一部の現象に限られており、電磁場を「光子の集まり」と見なすことは、ほとんどの場合、不適切です。

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質問純水と精製水の違いを教えてください。【その他】
回答
 「精製水」が日本薬局方に定められた水質基準に適合する水を指すのに対して、「純水」に厳密な定義はなく、イオン交換樹脂などによって不純物を取り除いた水を一般的にそう呼んでいるようです。
 なお、「精製水と蒸留水の違い」という類似した質問にも回答していますので、そちらも参照してください。

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質問量子ゆらぎは、エントロピーが単調非減少であることと関係しているのでしょうか。【その他】
回答
 これは、おそらく関係ないと思います。エントロピー増大の法則は、統計法則に従う系の特徴です。ところが、量子ゆらぎは、確率微分方程式の解に見られるような統計的な性格のものではありません。量子系で全てのオブザーバブルについてゆらぎのない状態を定義することが、そもそも不可能なのです。私は、量子ゆらぎは、そもそも「ゆらぎ(揺動)」ではなく、量子状態が定義される状態空間での「拡がり」だと考えています。

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質問光の速度は秒速約30万kmですが、それ以上になる可能性は、この宇宙が誕生する瞬間になくなってしまったのですか。【その他】
回答
 相対性理論によると、時間と空間は統一されて4次元時空を構成しています。言うなれば、同じ幾何学的世界の異なる方向を意味しているのですから、時間も空間も同じ単位で表されるべきなのです。真空中の光速cは、実は、時間と空間の単位の換算定数であり、本来は“1”となるはずです。
 それでは、「秒速30万km」という数字はどこから来たかというと、時間の単位は地球の自転から、空間の単位は子午線の長さから、それぞれ独立に決めたために、両者を結びつけるための換算定数が必要になったのです(これは、熱の仕事等量が、カロリーとジュールという2つの単位を結びつける換算定数にすぎないのと同じことです)。
 ただし、光速そのものは換算定数にすぎないとしても、物理的過程における空間的拡がりと時間的経過が決まる過程には、それ以外の物理定数が関与してきます。例えば、水素原子の場合、電子軌道の大きさや、単位時間あたりの遷移確率は、真空中の光速やプランク定数(実はこれも換算定数です)以外に、電子や陽子の質量と電磁気的な相互作用係数(微細構造定数=電気素量の2乗を無次元化したもの)によって決定されます。ところが、こうした素粒子の質量や相互作用係数は、宇宙の初期の物理的な過程によって偶然に今の値に落ち着いたと考えられています。この過程が実際とは少し違った形で実現されて、陽子に対する電子の質量比が1/1830よりも小さくなっていれば、多くの物理現象が今よりもゆっくり進行するような不思議な世界になるかもしれません。

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質問高圧電線の上にスズメがとまって感電しないのはなぜですか?【その他】
回答
 「感電」とは、身体に接触している2つの導体の間に大きな電位差があり、電圧の高い方から低い方へ体を通って電流が流れることによって起こります。例えば、電気器具をいじっているときにうっかり電圧の高い部分に触れると、電圧の低い地面に接触している足へと電流が流れていくために感電します。
 高圧電線は、地面よりも電圧が高くなっていますが、鳥の足が接触している程度の間隔では、電位差はほとんどなく、体内を大電流が流れることもありません。ちょうど、ローマ水道のように高架になった水路があるとき、穴があいて水が地面に落下するときには強い流れになるのに、同じ高さの高架が続いているときには流れが緩やかになるのと同様です。
 ただし、異なる高圧電線の間には大きな電位差があるので、鳥の立場からすると注意が必要です。だいぶ以前に、JRで2羽のカラスが感電死したことがあります。隣り合う電線にとまっていたカラスが同時に飛び立とうとしたとき、広げた羽先が接触して電流が流れたようです(合掌)。

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質問何か物を燃焼させたときに熱と光が出ますが、なぜ片方のみにならないのですか。【古典物理】
回答
 燃焼とは、物質が酸素やフッ素、塩素などの酸化剤と結合して起きる発熱反応で、この過程で解放された化学エネルギーは、物質を構成する各部分に振り分けられます。分子・結晶内部の電子がエネルギーを獲得すると、いったん高いエネルギー準位に移った後、再び低い準位へと遷移しますが、このとき放出される電磁波の波長が可視光領域にあると「光の発生」となり、これより波長が長いと熱放射と見なされます。また、分子や結晶がエネルギーを獲得して、(気体分子などの)並進や回転、(分子や結晶の)振動のエネルギーとなることもあります。こうしたエネルギーは、分子レベルでの相互作用を通じて周囲に受け渡されていきますが、これが熱伝導に相当します。解放された化学エネルギーが内殻電子など特定部分に集中すると、光だけが発生するということも起こり得ますが、通常、燃焼に関与する物質の構成要素数は膨大であり、余剰エネルギーは、統計法則に従ってさまざまな部分に(量子力学の制限内で)ほぼ均等に割り当てられるので、光だけ発生するような燃焼は起こらないのです。
 なお、解放するエネルギーが小さく光を発生しない酸化反応はありますが、これは“定義によって”燃焼とは呼ばれません。

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質問現在考えられる方法で耐え得る最高温度は、どれくらいでしょうか。【その他】
回答
 「どういう状況で熱に耐えるか」によります。タングステンは溶融温度が3400℃なので、タングステン製のオブジェは高い耐熱性を持っていますが、実用的には無意味でしょう。全体をゆっくり加熱しても損壊しないというだけなら、数千度の高温に耐えられる耐熱レンガがあります。一方、焼成炉・工業炉やスペースシャトルなどに使用する実用的な耐熱材は、熱伝導率が低く、タイル状に加工したとき両面の温度差が数百度以上になっても損傷しないことが要求されます。こうした用途で使われるのは、主にセラミックスの耐熱材で、製品カタログには1200〜1700℃という耐熱温度が示されています(短時間なら、もう少し高温まで耐えられるはずです)。特殊な加工を施した炭化ケイ素の被覆材には、2000℃以上の高温に耐えられるものも開発されているとのことです。

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質問鏡と鏡を向かい合わせたとき、どこまで見ることが出来ますか? ただし、鏡面の反射部分は完全とします。【その他】
回答
 完全な合わせ鏡とは、無限に拡がった2つの反射面を平行に向かい合わせにしたものですが、この場合は、鏡の間は一様な定常状態になってしまい、像を結ぶということにはなりません。適当な物体を有限な大きさの鏡の間に置いて、外部から光を照射する(あるいは物体自体が発光する)という状況ならば、物体の像が何重にも見えますが、これも、どこまでも見えるというわけではなく、遠方に小さく見える像の大きさが可視光線の波長(数百ナノメートル)近くになると、像がぼやけてはっきりしなくなります。また、大きさが有限の鏡を使ったときには、それより先に、像がフレームアウトしてしまうでしょう。

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質問光速度=3.0×108m/sと聞いています。これは位相速度のことだと思いますが、群速度はいくらなのでしょうか。【古典物理】
回答
 通常の透明媒質において、波数kと角振動数ωの間には、
  k = ωn/c
という関係式が成り立ちます。ただし、nは媒質の屈折率、cは3.0×108m/sという真空中の光速度です。位相速度はω/k、群速度は
  ∂ω/∂k
であり、屈折率が振動数に依存しない(=分散がない)場合には、両者は一致します。真空は屈折率が1なので、位相速度と群速度はともに3.0×108m/sです。分散のある媒質では、nの振動数依存性に応じて位相速度と群速度に差が生じます。

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質問月の自転周期と公転周期がほぼ等しく、地球から月の裏側が見えないのは全く偶然なのでしょうか? それとも月のできたメカニズム等から説明できるのでしょうか。【古典物理】
回答
 この質問については、別のところで回答していますので、そちらを参照してください。

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質問以前TVの某番組で表面が傷つき再生が不能になったCDを冷凍庫に入れるとまた聞けるようになる、と聞いたのですがどうも信用できません。また、それが可能だとして、一体どのような機構で修復されるのか見当もつきません。【その他】
回答
 ご指摘になっているのは、日テレ系で放映されている『伊東家の食卓』のことだと思いますが、肝心の番組を見ていないので、どのような条件下で実験したのかわからず、何とも言えません。
 CDが再生不能になるのは、主に、データを記録している部分を保護する透明な層の表面が傷ついて、データが読み出せなくなっているためです。したがって、特殊な機械(専用の研磨剤を染み込ませた不織布を利用したものなど)で表面を磨いたり、屈折率が同じ素材で傷を埋めたりして平らにすれば、再び音楽が聴けるようになります。また、CDプレーヤーには、読み取れなかった部分を前後のデータから補完する機能が備わっており、この機能の良し悪しによって、ある機種で再生不能だったCDが別の機種では再生できるということもあります。しかし、冷凍庫で冷やすとCDが復活するという説は、にわかには信じられません。常識的に考えると、膨張率の違う素材を組み合わせているディスクが温度変化によって歪む、あるいは、クラック内部に付着した水分が凍って割れ目を押し広げるといったことが起きて、かえってCDを傷めるようにも思われます。もっとも、インターネットで検索すると、この裏技で傷ついたCDを修復したという報告例が複数あり、あながち出鱈目ではないようです。
 日常的なことほど科学で解明するのが難しいという例でしょうか。

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質問タイムループという言葉を目にすることがありますが、実際に起こり得るのでしょうか? 起こるとすればどのような原因なのですか? もし今現在起こっているならば、それがわかる方法はあるのでしょうか?【現代物理】
回答
 タイムループとは、「時間的に閉じた世界線」に見られる時間の循環のことだと思いますが、そうした世界線が存在すると、時間旅行が可能になり、タイムパラドクスが生じる可能性も出てきます(この問題については、「科学の回廊」−「タイムパラドクス!」で議論しています)。物理学的にはタイムループの存在を禁じる原理はないのですが、時空が一般相対論における運動方程式に従っている限り、通常の宇宙空間において巨視的なスケールで時間がループ状になることはありません。あるとすれば、量子論の法則(これは、一般相対論の方程式には確率的にしか従いません)に基づいて極小の時空間に瞬間的に形成されるだけです。こうしたループ状の時間については、現在の技術では観測しようがありません。ただし、標準的な物理学理論ではで想定されていないエキゾティックなもの──例えば、負のエネルギーを持った物質──が存在する場合は、巨視的なタイムループが安定になるという説もあります。

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質問核力の説明に、よく、π中間子をキャッチボールのようにやりとりする、というような表現がなされていますが、実際の所よくわかりません。【現代物理】
回答
 “キャッチボールのように”とはあくまで比喩的な表現で、正確に理解するためには、場の量子論の知識が必要になります。マクスウェル理論のような古典電磁気学では、クーロン力は荷電粒子が直接及ぼしあう力ではなく、電荷によって周囲に電場が形成され、荷電粒子はこの電場から力を受けると見なされています。核力も同様に、陽子や中性子の周囲にπ中間子場が形成され、このπ中間子場内にある陽子・中間子に力が作用するというものですが、電場と異なって古典論の範囲で定量的な計算をすることが難しく、どうしても量子化して考えなければなりません。一般に、場を量子化すると、(電磁場が粒子性を持つ光子の集まりと見なされるように)粒子的な性質が現れます。 qa_pt04.gif この結果、π中間子場の作用は、あたかもπ中間子という粒子が担っているように記述されますが、その状況を古典的な言葉で言い表そうとすると、「核力はπ中間子の交換によって生じる」というわかりにくい表現になるのです。陽子・中間子の衝突のように、関与するπ中間子の個数を1〜数個に限る近似(摂動論近似)が有効なときには、「π中間子を交換する」というイメージを使ってもかまいませんが、原子核内部の陽子・中間子の場合には、こうした近似が成り立たないので、「π中間子をキャッチボールのようにやりとりする」という表現は不適切でしょう。

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質問物理の基礎として電子の基底状態から励起状態の遷移という概念を習いますよね。あの話で、逆に光の放出という話も習います。そこで質問になりますが、世の中の物質の大半が、昼に吸収しただろう光のエネルギーを、何故夜に光として放出をしないのでしょうか?【現代物理】
回答
qa_pt03.gif  一般に、光の放出は原子が光を吸収した直後に生じます。量子論の初歩で勉強する水素原子の場合は、基底状態に近く準位がまばらな状態を考えることが多いのですが、実際の原子では、外殻の状態密度が高い領域で遷移が生じることが多いので、励起状態から基底状態に戻る際には、エネルギー差の小さい状態へと断続的に落ちていくことになり、放出する光子も、振動数の小さい(波長の長い)ものになります。こうした光子の多くは赤外領域に属するため、目に見えない熱放射として放出されています。

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質問光のドップラー効果についてですが、光の速さは一定なのになぜ波長だけ変化するのですか?【古典物理】
回答
 波の速さが一定でも、波源が運動している場合は、ドップラー効果が生じます。音の場合、媒質が静止している系で音源が速度vで運動しているときには、音源の進行方向で
  (c-v)/c
の割合で波長が“押し縮められる”て波長が短くなります。光では、どの観測者にとって光速は一定なのですから、(相対論的な効果を無視する範囲で)波源が動いているときのドップラー効果の公式が成り立ちます。
 音と光の決定的な差異は、波長が観測者による量かどうかという点です。音の場合、媒質に対して運動している音源の上にいる観測者から見ても、媒質の流れのために波長が変化していることを観測することは原理的に可能です。しかし、光源上にいる観測者にとって、媒質の流れは観測できず、ドップラー効果はいかなる方法をもってしても認められません。波長の変化が生じるのは、光源と観測者の間に相対運動がある場合に限られます。

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質問格子運動ってどんな運動ですか?【その他】
回答
qa_pt02.gif  物理学の分野で格子運動(格子振動)と言えば、結晶格子における原子の振動を意味します。現実の結晶では、熱運動などの際に電子分布も複雑に変化しますが、バルクの性質を考えるのに有効な近似として、電子の効果はポテンシャルの中に繰り入れてしまい、原子核の位置自由度だけを使って原子の状態を記述することが一般的に行われています。最も簡単な近似では、隣り合う原子の間に、その相対距離rだけに依存するようなポテンシャルU(r)を仮定します。こうしたポテンシャルを平衡点の周りで展開すると、2次の項((r-r0)2)から始まりますが、これは、原子同士がバネでつながれている場合と一致します。したがって、格子振動とは、バネで結ばれた原子の集団が振動しているような状態としてイメージすることができます。
 固体が持つ多くの物理的な性質は、格子振動によって説明されます。例えば、熱は格子振動を介して運ばれると仮定すると、熱伝導に見られるいくつかの特性を定量的に導くことができます。

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質問中国の黄土高原の土は、水を入れると急激に沈下する特性を持っていると聞いたのですが、なぜでしょうか? そのような土が生成されるに至った背景にも興味があります。【その他】
回答
 文献(*)によると、黄土高原は、中央アジアや蒙古高原から風によって運ばれた黄土が、粒径別に落下して堆積したという説が有力だそうです。こうして形成された土壌は、粒径0.05〜0.005mmのものが過半を占め、孔隙率も45%以上と大きいため、水を含むと分散しやすい性質があるとのことで、これが、さまざまな物理的性質の元になっていると思われます。この分野はあまり詳しくないので、土壌学などの専門書を参照してください。
(*)難波宣士著「黄土高原緑化への挑戦」;『アジアの食料と環境を考える』(廣瀬昌平編、龍渓書舎)収録

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質問緯度・南中高度・赤緯の関係を教えて下さい。【その他】
回答
qa_167.gif  簡単な説明は、次の通りです。  言葉ではわかりにくいかもしれませんが、子午線で切ったときの位置関係を図に描けば、一目瞭然だと思います。3つの角度の関係は、次のようになります:
  h=90°−|φ−δ|

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質問 内惑星・外惑星が同時に一直線に並ぶ年があったと聞いています。一直線になると惑星の引力の影響で地球上の巨大地震の原因になるとの説を発表した方がありましたので、2003年前と後100年ほどの間で惑星が直列する年を教えて下さい。【その他】
回答
 惑星直列に似た話題として、すでに「グランドクロス」(惑星が十字架型に配列すること)について回答していますので、そちらを参照してください。
 惑星直列にしてもグランドクロスにしても、地球に地震を引き起こすような作用はありません。
 最近の惑星直列としては、2000年5月に、水星・金星・火星・木星・土星の5惑星が地球から見てほぼ太陽付近の19.4度の範囲に集まったことがあります(「国立天文台ニュース」より)。一部のデマゴーグが、こうした惑星直列は6000年ぶりであり、天変地異が起きると騒いだために社会的な話題にもなりましたが、もちろん、地球に異変はありませんでした。
 次の直列がいつになるかは、どの程度の範囲に惑星が集まったときを「惑星直列」と呼ぶかによって異なります。厳密に一直線上になることはあり得ませんが、十数度の範囲に集まるときをそう呼ぶなら、数千年の間隔で起きるようです。

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質問 クローン人間が作られるのは、そのクローン人間の臓器を利用するためなのですか? ということはクローン人間を殺してしまうのですか? クローンについて初めて学んでいるのであまりわかりません。【その他】
回答
 個体としてのクローン人間を作ることに対しては、大半の医学者が反対しており、ごく一部でしか計画されていません。最もまじめな計画は、生殖能力を失った男女の不妊治療の一方式として、彼らのクローンを作ろうというものです。ただし、クローンは通常の意味での“子供”ではなく、時を違えて生まれた一卵性双生児に相当するので、不妊治療としては不適切だという見方が一般的です。
 このほかには、宗教的指導者など自己の分身を欲する人のクローン作りを計画しているところもあるようですが、当然のことながら、多くの批判にさらされています(ナチの残党がヒトラーのクローンを作ろうとする小説『ブラジルから来た少年』のアイデアは、フィクションに終わらせてほしいものです)。
 移植用臓器の作成にクローン個体を利用することは、現実的ではありません。SF小説などでは、脳が形成されないように遺伝子操作を施したしたクローンボディを臓器のドナーとして利用するという話もありますが、あまりに非倫理的であり、実行しようとする医学者はいないはずです。
 ただし、クローン胚(クローン技術を使って核移植を行った細胞が100個程度まで増殖したもの)からES細胞(俗に言う万能細胞)を取り出し、それに化学物質を添加することによって人体組織や臓器を作り出そうという研究はあります。動物実験では、心筋細胞や神経細胞が作成できることが確認されています。心筋梗塞の患者の細胞を使ってクローン胚を作り、そこから心筋細胞を作成して移植すれば、拒絶反応の起きない移植医療になると期待されています。ただし、この方法でも、最初にクローン人間の“元”になるクローン胚を壊してES細胞を取り出すため、倫理的に問題があると考える学者も少なくありません。人間のクローン胚を利用した移植医療は、フランスやドイツでは法律で禁止されており、アメリカでも禁止法案が下院を通過しています。

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質問 ディラックの用いた行列によるシュレーディンガー方程式の便利さが分かりません。波動関数ばかり使って解いても十分だと思うのですが。【現代物理】
回答
 誤解がないように言っておきますと、ディラック方程式は量子場のダイナミクスを規定する方程式であり、場の確率振幅を規定するシュレディンガー方程式とは別の物です。
 電子のようなスピン1/2の粒子は、粒子−反粒子のそれぞれにスピンのアップ/ダウンの自由度があるため、全部で4つの自由度があると考えられます。電磁相互作用などを通じて、これらの自由度が(対生成/対消滅やカイラリティの反転などのように)相互に関係を持つため、4つの成分を持つスピノルψとして統一的に扱わなければなりません。ディラック方程式の係数に現れる行列は、各成分の関わり合いを表すのに必要なものです。ただし、実際にディラック方程式の便利さを実感するのは、大学院専門課程に進学してからのことです。
 場の量子論におけるシュレディンガー方程式は、電子場ψ(x,t)や電磁場A(x,t)などの振舞いを全空間にわたって規定するものです。このとき、波動関数Ψは、非相対論的な量子力学で各粒子の位置演算子qを使って表されていたのと異なり、ψやAの汎関数:
  Ψ[ψ,A]
という化け物的な関数になります。シュレディンガー方程式は、全空間にわたる時空微分を使って、
  i∂μΨ=PμΨ
となります。この方程式も、専門家以外は目にすることがないでしょう。

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質問 原子が結晶を構成した場合、結晶中の電子はどのようなエネルギー状態なのですか? また、そのエネルギー状態をもとにして結晶の伝導性はどのように分類されるのですか?【古典物理】
回答
 結晶における電子のエネルギー状態については、それだけで1冊の教科書が執筆できるような大きな問題ですので、ここではお答えしかねます。ごく大雑把に言えば──結晶には、イオン結晶・共有結合結晶・金属結晶などがあり、イオン結晶では、電子は各イオンの近傍に局在して希ガス原子の閉殻構造に相当する状態になるのに対して、共有結合では、多くの場合、2個の電子が2つの原子の中間領域に局在し、数eV程度の結合エネルギーを獲得します。ただし、イオン性と共有結合性が入り混じっている結晶も少なくありません。一方、金属結晶の場合は、原子当たり1〜2個の電子が局在せずに自由に運動して、電気伝導の担い手となっています。
 より詳しくは、固体物理学などの教科書をご覧ください。

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質問 コンピュータへの感情プログラミングについてのQ&Aにある「人間が心地よいと感じるのが 1/f 揺らぎを持つ音である」について、“1/f 揺らぎ”とは、物理的にはどのようなものなのでしょうか。【その他】
回答
 時間的に不規則な変化をする現象を分析する際には、しばしばパワースペクトルが利用されます。パワースペクトルとはフーリエ係数の2乗平均として定義されますが、簡単に、各周波数成分の強さと言ってもかまわないでしょう。“1/f揺らぎ”とは、パワースペクトルが周波数fに反比例する揺らぎであり、ろうそくの炎やそよ風などの時間変化が、このタイプの揺らぎになっていることが知られています。音で言うと、音叉による特定周波数だけの音と、放送終了後にラジオから聞こえる「ザー」というホワイトノイズ(パワースペクトルがフラットになる)との中間に当たるもので、規則正しさと乱雑さが程良く混じっていると言えるでしょう。
 人間の生体リズム(心拍や脳波のα波など)にも1/f揺らぎが見られますが、そのせいか、1/f揺らぎを持つ現象は、人間にとって心地よく感じられることが多いと言われています。実際、ストレスを低減する環境音楽として、1/f揺らぎでメロディや強弱を制御したコンピュータ音楽が利用されることもありますし、モーツァルトなど多くの人が名曲と感じるクラシック音楽も、周波数分析を行うと、1/f揺らぎに近いパワースペクトルになっているそうです。

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質問 ヒト由来のタンパク質Aとマウス由来のタンパク質Bが同一のタンパク質であることをどのように証明できるのでしょうか?【その他】
回答
 あるタンパク質がデータベースなどに記載されたタンパク質と同一であることを示すには、次のような方法がポピュラーです。まず、プロテアーゼを用いて特定部位で切断し、得られたペプチドの質量を質量分析器で正確に測定、質量値の分布パターンを調べます。これが2つのタンパク質で完全に一致すれば、同一のタンパク質と結論されるはずです。ただし、全てのペプチド質量を正確に測定するのは至難の業であり、検出漏れも相当出るようです。
 タンパク質の同定は、ポストゲノム研究の出発点となる重要な作業なので、新しい分析機器も次々と開発されているとのことです。

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質問 核爆弾が落ちて、銅でできた建物が近くにあった場合、その建物の表皮への影響を教えてほしいのですが。【その他】
回答
 核爆弾が近くに落ちれば、ほとんどの建物は爆風で吹き飛ばされるはずです。吹き飛ばされないにしても、衝撃波によって変形・破損などの物理的ダメージを受けることになります。
 爆風に吹き飛ばされなかったとすると、それ以外の影響は、主に、放射線(γ線・β線・中性子線など)と電磁波(X線以上の波長のもの)の照射によって生じます。可視光線より波長の長い電磁波は(銅表面が磨かれていれば)大部分が反射されるでしょうが、波長の短い電磁波やγ線・β線は、通り抜ける過程で大きなエネルギーを与えます。こうしたエネルギーは、熱に変換されるほか、電子を弾き出して二次電磁波の発生などの電磁気的現象を引き起こしたり、銅原子の位置を動かして格子欠陥を作り出したりするはずです(詳しくはわかりません)。

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質問 プラズマはどのようにすれば起きやすくなるのですか。【その他】
回答
 プラズマと一口に言っても、宇宙空間に広く存在するものから、トカマク内部に生成されるプラズマ、さらには、蛍光灯内部の電離気体まで、きわめて多様であり、一律にはお答えできません。人為的に利用するプラズマは、多くの場合、希薄気体に放電などを利用してエネルギーを注入して作るので、エネルギーの伝搬効率などが問題になります。また、容器壁にプラズマ粒子が衝突すると中性の気体に戻るので、これを回避する方策が必要になります。

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質問 力学の運動量保存の法則を確かめる方法はたくさんあります、台車の衝突などですが・・・。これらの方法の中で台車の衝突の実験でe=1のときとe=0のときの実験では、実験から得られる値と計算で導き出される値の正確さはe=0のときが高いように思うのですが、どうしてなのですか?
 また、重力の位置エネルギーと運動エネルギーによる実験と、バネの弾性エネルギーと運動エネルギーによる実験では、運動エネルギーの方が正確なのですが、なぜですか?【古典物理】
回答
 学生実験に関する質問は、具体的に何を意味しているかを掴みかねることが多く、なかなかお答えできないというのが実状です。上の質問のうち、前半は、おそらく、速度の測定に誤差が生じやすいことに起因すると思われます。最近は、学生実験でも使える簡単な速度測定器が市販されていますが、どうしても誤差がつきまといます。台車の運動の場合は、摩擦による速度変化を避けるために、衝突の直前・直後で測定を行わなければならないので、技術的にも難しくなります。e=0 の場合は、衝突後に2物体が合体しているので、測定すべき速度が1つ少なく、誤差が出にくいのではないかと思われます。後半の質問については、状況が良くわかりません。

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質問 動いている電車の中で鳥や虫が飛んだときに慣性は働いているのですか? ボールを落とした時に慣性が働いているのは分かるのですが、鳥や虫のように地面から離れた後自力で飛んでいくものには自分で飛ぶスピードが決められるので…その辺が疑問なのです。【古典物理】
回答
 鳥や虫は空気中で羽ばたいて飛んでいるので、彼らにとっては、空気に対する相対運動が問題となります。もし、電車が完全に密閉されていて、車内の空気が常に電車とともに動いている場合、車内を飛び回る虫にとっては、動いている電車が基準系となるので、急停止したときには、空気抵抗に逆らって前の方に投げ出されるという形で慣性の法則を実感することになります。

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質問 レンズの焦点距離を測る方法として、ベッセルの方法がありますが、それはどのような原理ですか?また、視差法の原理はどのようなものでうすか?【その他】
回答
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 ベッセル法や視差法は、レンズの焦点距離を簡易的に求める方法として、学生実験などでよく用いられるものだそうです(と言っても、私自身は、物理実験法の教科書を調べて初めて知りましたが…)。いずれも、レンズの焦点距離f、レンズから物体までの距離a、実像までの距離bの間に成り立つ良く知られた関係式:
  1/f = 1/a + 1/b …(1)
に基づいています。
  1. ベッセル法 : 物体とスクリーンを距離pだけ離しておき、その間でレンズLを移動すると、2ヶ所でスクリーン上に鮮明な像が現れます。その間隔をqとしましょう。レンズと物体および実像との間の距離は、対称性((1)式で物体と実像を入れ替えても同じ関係式が成り立つこと)より、次の関係式を満たします:
     a1 = b2, a2 = b1
    したがって、
     a1 + b1 = p, b1 - a1 = q
    となるので、pとqを使って(1)式を書き換えれば、直ちに、
     f = (p2-q2)/4p
    として焦点距離f が求められます。
  2. 視差法 : 物体と平面鏡の間にレンズLを置き、レンズを動かしながら、物体と実像が同じ位置にできる──すなわち、目を動かしても、常に図の矢印の頭が重なって見えるようになる──箇所を探します。このとき、レンズと物体の間の距離が焦点距離fになります。これは、(1)式でaとbのいずれか一方が無限大になる場合に当たります。

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質問 量子論的な物体移動(量子テレポーテーション)が実験的に観測されていると聞きましたが、鉛筆や消しゴムといった古典論に従う個体にも適用できる時代がくるのでしょうか?【現代物理】
回答
 量子テレポーテーションに関しては、別のところで解説しておきました。遠方に送れるのは、あくまで自由度の少ない分子・原子の量子力学的な状態だけであり、自由度が百億の百億倍のさらに何十万倍もあるような巨視的物体に関しては、テレポーテーションは不可能だと考えられます。

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質問 宇宙開発をするにあたり、物資を地球から打ち上げることになると思いますが、このとき、地球の質量の変化によって、地球の公転軌道が変化したりしないのでしょうか。
また、公転軌道の変化以外に何か考えられる影響があったら教えてください。【その他】
回答
 地球は、質量が60トンの百億倍の百億倍もある巨大な物体なので、人類が宇宙開発に利用する程度の資材を打ち上げても、ほとんど影響を受けません。それよりも、宇宙空間から降り注ぐ彗星や隕石の方が、相対的に大きな変化を与えるでしょう。こちらの方は、累計的な効果なら、測定機器の性能が向上しさえすれば、そのうち観測可能になるはずです。
 ただし、『スターウォーズ』に出てくるデススターなみの宇宙基地を建設しようとすると、地球の公転軌道や自転速度、地軸の向きなどが変わるかもしれません。かなり遠い将来の話でしょうが…。

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質問 暗騒音を15ホーンに設定する為に騒音計を使用し設定したいのですが、何dBに設定すれば良いのでしょうか?【その他】
回答
 ホーンとデシベルは同じ単位と考えてかまいません。詳しい説明は、別の回答にあります。

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質問 2つの気体(たとえば空気とガス)の流量を比較するために、一方の気体に換算しようとしているのですが、そこで密度をかければいいのかと思っていたら、昔の文献で比重量をかけていたのがありました。また、比重量について調べると密度と考えてもよいと書いてありました。密度と比重量を同じと考えてよいのでしょうか?【その他】
回答
 定義を述べると、
  密度=単位体積あたりの質量
  比重量=単位体積あたりの重量
です。重力加速度を一定と考えると、質量 1kg の物体の重量は 1kgW になるので、(単位のW(eight)を別にすれば)質量と重量を同一と見なしてもかまいません。ただし、厳密に言えば、重力加速度は測定地点によって異なるため、両者は必ずしも一致しません。一般に質量は測定が難しく、重量のデータしか得られない場合が多いので、結果をまとめる際には、重量を基本的な量として扱う重量単位系を用いた方が便利なこともあります。その際には比重量という概念が使われますが、重量の測定結果がmではなくmgであることを忘れさえしなければ、密度を使ってデータを処理しても問題は生じません。

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質問 土壌の研究室で定水位透水試験を行う際にマリオット管を使うのですが、一定の圧力(水圧)を与え続けられる仕組みがよく分かりません。【その他】
回答
 すみません。技術関連の辞典を調べたのですが、マリオット管の記述はありませんでした。特定の分野で使われる装置なのでしょうか。

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質問 宇宙の膨張・収縮について教えてください。よくビッグバンモデルで使用されるイメージでは、宇宙を3次元の球形の塊として表現していますが、その場合、確かに各星の重力により中心部にひきつけられることで球の半径が小さくなることはわかります。しかし、実際には、宇宙は端があるわけではなく、4次元的に閉じているモデルが一般的と思いますが、この場合、各星に対する重力は全方向均一になるため、運動は発生しないように思われます。それとも、2物質間の重力によって、空間自体が縮むということなのでしょうか?
反対に、ビックバンのような大きなエネルギーが発生したときに、物質がただ閉鎖空間内を高速に移動するだけではなく、力が空間の大きさを変更するような方向に変わるものなのでしょうか?【現代物理】
回答
 ビッグバンの説明で良く用いられるのは、宇宙を3次元の 球面 として表すモデルです(このモデルは、必ずしも現実を正しく表してはいませんが、わかりやすいという特長があります)。3次元空間における球の表面は、端のない2次元の世界になっています。地球儀の上を這っている毛虫は、真っ直ぐ前に進んでいるつもりでも、いつの間にか球面をぐるりと一周して元の地点に戻ってきてしまいます。それと同様に、4次元空間における球の表面は、端のない3次元の世界になっており、ある地点から一定方向に真っ直ぐ進んでいくと、(宇宙が超光速で膨張・収縮さえしていなければ)いつかは同じ地点に戻ることになります。ただし、4次元の球が実際に存在しているわけではなく、数学的なモデルを考える際にイメージとして用いるものです。宇宙の膨張・収縮とは、仮想的な4次元球の半径が増大・減少することに対応しています。
 3次元球面(4次元球の表面)で星が一様に分布している場合、ある1つの星から見ると、どの方向にも同じように星が存在し、万有引力で引っ張っているので、結局、全ての力は相殺されて、引力を受けることはありません。しかし、空間全体で見ると、星同士が引き合っているわけですから、球面を小さくしようとする力として作用します。もし、地球儀の上に毛虫がビッシリといて(ゲッ!)、互いに引っ張り合っているとすると、1匹の毛虫は周りから同じように引っ張られるのでどこかに動くということはありませんが、毛虫たちが異常に力持ちだと、地球儀自体が潰れてしまいます。
 宇宙の膨張は、ビッグバンによって空間全体が膨らむような初速度が与えられたために生じたものですが、天体同士の引力によって次第に減速していきます。最終的な運命は物質の平均密度によって異なりますが、密度が充分に大きければ、いつか収縮に転じ、宇宙全体が小さくしぼんでしまいます。

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質問 状態関数が複素関数でしか表せないのはなぜですか?【現代物理】
回答
 現在、その理由はわかっていません。経路積分を使って量子化し、トレース(跡)によって物理量を表すようにすれば、全ての物理量が実数で表されることは保証されます。しかし、途中の計算で複素数が使われるのは、どうしようもないことです。基本的に、振動解が現れるような物理現象は、実三角関数よりも複素指数関数 exp(iφ) を使った方が見通しが良くなるという性質があり、媒質中の電磁気学などは、なまじ実数にこだわるよりも複素関数で定式化した方がスマートになることを思い起こすと、量子力学の場合も、背後に何らかの振動現象があるとも想像されます。しかし、手持ちの知識だけでは、何らかの積極的な主張をすることは困難です。

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質問 量子力学で使われる波動方程式、物理量の演算子、確率解釈などは一体何を元に作られたのですか? 古典力学からスムーズに移行する過程が知りたいのですが。【現代物理】
回答
 質問されているのは、正に量子力学史の焦点になるテーマです。歴史的には、波動方程式はド・ブロイの物質波の概念を発展させたシュレディンガーによって、演算子はボーア/ゾンマーフェルトの量子化規則を精緻化したボルン/ハイゼンベルグによって導入され、確率解釈は、これらを量子力学として総合する過程でボルンによって提案されました。それだけで1冊の本が書けるような話題ですので、ここでは、この分野で最良とされる著書を紹介するにとどめておきます。
  M.ヤンマー著『量子力学史』(東京図書)

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質問 ジャマンの干渉計を使った空気の屈折率の測定の実験での一般的な実験結果の実験値や測定値を知りたいのですが。教えていただけませんか? どの文献にも載ってないのですが…。【古典物理】
回答
 ジャマン干渉計で空気の屈折率を測定するというのは、たぶん学生実験ですね。通常の教科書や学術雑誌には、この手のデータはほとんど見あたりません。学生実験の指導書には載っているのかもしれませんが、私の手元にはありません。
 学生実験がらみの質問はかなり寄せられますが、なかなか答えられないのが現状です。

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©Nobuo YOSHIDA