20世紀型の産業社会は、太陽から地球に供給されるエネルギーを遥かに越える膨大なエネルギー資源を消費するものであり、現在の仕組みを変えなければ、21世紀半ばに破綻を迎えることは確実である。
物質に関しては、製品の長寿命化などによってその使用量を抑制し、使用後には可能な限り再び製品ないし原材料として再利用するという方法が具体化している。しかし、エネルギーの場合、「社会の中で循環させる」ことは、物理的に不可能である。これは、『エントロピー増大の法則』という物理法則が存在するためである。「エントロピー」とは、(物理学的な正確さを無視してごく大ざっぱに言えば)「エネルギーの質の悪さ」を意味する。物理的な過程を通じて人間がエネルギーを利用すると、『エネルギー保存の法則』によってその総量は変化しないが、必然的にエントロピーが増大してエネルギーの質が悪化し、工業的に利用することが物理的に困難になる。エントロピーの低い“質の良い”エネルギーは、波長の短い光や高分子化合物に含まれる化学的エネルギーなどであり、一方、“質の悪い”エネルギーの代表が熱エネルギーである。例えば、自動車を走らせる場合、ガソリンが持つ化学的エネルギーは、エンジンの働きで(その数十パーセントが)車体の運動エネルギーに変換されるが、ブレーキを踏んで車を停止させるときに、大半が摩擦熱となって散逸してしまう。こうして、人間の活動によって質の高いエネルギーがどんどん消費され、質の悪いエネルギーに変化していくのである。
エネルギーを社会の中で循環させることが物理的に不可能である以上、文明を長期間にわたって維持するためには、人類は、エネルギーが常時供給される範囲で産業活動を行っていかなければならない。これが、持続可能な発展を実現するための条件となる。
©Nobuo YOSHIDA