「持続可能な発展」のための技術
「持続可能な発展」を目指して
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1.要旨
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大量消費文明が行き着くところまで進んだ20世紀末、人類は、一方的搾取に起因する資源の減少と、廃棄物の野放図な放出による環境汚染に苦しめられている。1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)では、こうしたことに対する反省から、「持続可能な発展(sustainable development)」という標語の下に、自然が許容する範囲で豊かに暮らす道を探るべきだと訴えられた。日本においても、市民や企業が、廃棄物の抑制や資源の再利用に向けて、少しずつ動き始めている。この講義では、廃棄物問題を中心に、持続不能性が明らかになった20世紀型産業社会の問題点を指摘し、その上で、廃棄物を最小限にとどめる循環型社会の実現と、持続的エネルギー源の開発に関して、現状と今後の見通しを解説する。題材の選択に当たっては、世界各地で現に問題になっている具体的な事例を重視する「地域的視座」を採用する。
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2.展開
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序章.産業社会の持続可能性
20世紀における産業の発展は、環境資産の減少に配慮せず、一時所得の増大を目指すものであった。こうして長期的展望のないままに実現されたこんにちの産業社会は、その状態を持続することが物理的に困難なものになっている。
第1章.廃棄物問題の現状
従来、産業廃棄物の処理に当たっては、次の3つの方法が採られてきた。(1)毒性のない気体・液体はそのまま環境中に放出する、(2)毒性のある気体(粉塵を含む)・液体は、生物に悪影響が現れる閾値以下に希釈して排出する、(3)固体廃棄物のうち可能なものは焼却した上で埋立処理を行う。一見合理的に思われるこれらの処理法は、いずれも、深刻な環境問題を引き起こすことが明らかになっている。
§1.地球温暖化(二酸化炭素の温室効果、炭素税の是非)
§2.低レベル化学汚染(環境ホルモン作用、土壌汚染)
§3.焼却・埋立処理の弊害(ダイオキシンの発生、埋立地の不足)
第2章.循環型社会への始動
消費社会においては、資材を環境から搾取して利用し、不用になったものを廃棄するという一方的な物質の流れがあった。これを、資源のリサイクルやインバース・マニュファクチャリングを進めることによって、可能な限り物質を循環させる循環型社会に改めていくことが、これからの課題である。
§1.リサイクルの現状と今後(各国のリサイクル事情、デポジット制)
§2.インバース・マニュファクチャリング(“使用後”を考慮した製品設計)
§3.環境経営(廃棄物ゼロ化のコスト、環境勘定)
第3章.持続可能なエネルギー源の開発
産業社会を維持するためのエネルギー源として、これまで化石燃料の比重がきわめて大きかった。だが、21世紀後半に予想される石油の枯渇と、燃焼とともに生じる二酸化炭素やイオウ酸化物による環境問題(地球温暖化、酸性雨)に対処するため、これに代わるエネルギー源の開発が急務となっている。
§1.エネルギー問題の現状(化石燃料の限界、各国のエネルギー政策)
§2.原子力発電の今後(核燃料サイクル、核廃棄物問題)
§3.持続的エネルギー(太陽電池、風力発電)
§4.エネルギー効率の向上(燃料電池、省エネ対策)
©Nobuo YOSHIDA