新学説の受容過程

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概要

 白亜紀末期に恐竜をはじめとする多数の生物種が絶滅した原因は何か。この謎は、多くの人にロマンを感じさせ、これまで、科学的・非科学的をと問わず、さまざまな説を考案させてきていた。大きく分けると、全地球規模の外因性の破局(磁極の逆転、超新星爆発、巨大火山の噴火、隕石の衝突など)が起きて短期間に大絶滅が起きたというキュビエ流の激変説と、生態系や気候環境の小さな変化が積み重なって恐竜たちは次第に生存不適格になっていったというライエル流の漸変説があり、どちらかと言えば後者が学界の主流をなすとも言えたが、定説として支持される学説はなかった。ところが、1980年にアルヴァレら4人の学者が連名で発表した論文は、恐竜絶滅に関する論争に、決定的な影響を及ぼすことになる。この論文で、かれらは、6500万年前に地球に衝突した小惑星が、地球の気候を激変させて、恐竜やアンモナイトをはじめとする多数の生物種を絶滅に追い込んだと主張した。いささか突拍子もないこの学説は、いまや、恐竜絶滅に関する最も有力な仮説と目されるに至っている。 多くの科学者から軽視されていた激変説を復活させ、慎重居士の多い学界でかくも強い支持を得たのはなぜか。ここでは、アルヴァレたちの論文の内容を分析することにより、この理由を解明し、ひいては、画期的な新学説が受容される過程の一般論を展開する。
【参考論文】 L.W.Alvarez, L.Alvarez, F.Asaro, H.V.Michel, 'Extraterrestrial Cause for the Cretaceous-Tertiary Extinction'
この講義に関しては、短い覚え書きだけをアップします。


©Nobuo YOSHIDA