生物とは、環境中の資源を消費して子孫を残す存在です。短期的には、最も効率的に子孫を増やしていく種がその地域で支配的になりますが、こうした種は、往々にして生存・増殖に必要な資源を大量に消費し、代わって利用価値が乏しく、しばしば有害な廃棄物を排出するため、あまりに増えすぎると、周辺環境は(既存の生物種にとって)好ましくないものとなっていきます。例えば、今から30億年ほど前には、光合成によって栄養を作り出すシアノバクテリアが大発生し、反応性が強いために多くの生き物にとっては有害な酸素が大気中に蓄積するという大規模な環境破壊が起こり、その結果として、多くの生物種が死滅するに至りました。しかし、シアノバクテリアによる環境破壊は、地球の生物圏を壊滅させるものではなく、逆に、エネルギー効率の高い酸素呼吸を行う生物の進化を促し、真核生物の繁栄をもたらしました。このように、自然界においては、特定の種による環境破壊が別の種の活動によって埋め合わされ、うまくいけば、最終的に安定した生態系が形作られます。
ところが、知的生命が登場すると、事情が異なってきます。文明を獲得した生物種は、自分たちの生存率を高めるために排他的な生活圏を構築し、かつて人類が猿人に対して行ったように、同じ資源を利用する近隣種を絶滅に追い込んでいくと考えられます(“文明”とは排他的な生活圏の構築であると定義した方が良いかもしれません)。文明がさらに進歩すると、資源を大量に消費しながら版図を拡げていき、ついには、1つの惑星全体を支配することもあります。こうなると、この支配種による環境破壊を別の生物が補償する可能性は乏しくなり、資源の減少と廃棄物の増加は一方向的に進んでいきます。環境破壊は、文明を獲得した生物にとって、ある種の必然と言えるでしょう。
それほど愚かではない知的生命ならば、生活環境が著しく悪化する前に、何らかの対策が必要なことに気がつくはずだと思われるかもしれません。しかし、そもそも知能を持つ生物がなぜ登場したかを考えてみてください。生物が持つ知能とは、近づいてくる捕食者を察知して回避行動を取ったり、冬に備えて食べ物を蓄えたりするような、短期的な予測を元に行動プランを策定するものであり、あくまで生存率を高めるための補助的な能力です。遠い将来に起きるかもしれない災厄を憂えて、早い段階で対策を講じる能力を、ダーウィン的な生存競争の中で知能を獲得した生物に求めることは、端から無理なのではないでしょうか。森林伐採などによる環境悪化が衰退の一因になった古代文明が少なくないにもかかわらず、いつまで経っても学習できない人類が、良い例だと言えます。それでも、壊滅的な環境破壊と最終戦争の危機を乗り越えて、長期にわたる宇宙文明を構築できるものが、地球外文明の中で1%かそこらはあると期待してはいますが…
どこかの惑星には、大量消費・大量廃棄を行わない知的生命が棲息しているかもしれません。巨大な建造物も高速の交通機関も持たず、情報交換に基づく知的活動を続けている“森の賢者”といった趣の生き物です。しかし、こうした生き物は、強力な送信機やアンテナを必要とする電波文明を構築しないため、人類がコンタクトを取ることは永遠にかなわないでしょう。
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素朴な説明は、右図のように、空気との摩擦などによって発せられる音波の波面が無数に重なって衝撃音になるというものです。超音速で動く音源からの音波に関しては、
別の回答で解説していますので、そちらを参照してください。
もう少しきちんと説明するには、物体の周りでどのような気流ができるかを考える必要があります。簡単のため、物体が静止しており、空気が超音速で流れている座標系で考えてみましょう。気流の乱れが周囲に伝わっていく速度は、気体に対して音速以下にしかならないはずなので、単純に考えると、超音速流の乱れは、物体の先端より下流にしか生じないように思われます。しかし、そうであるならば、物体の先端に超音速でぶつかってくる気体の逃げ場がなくなってしまい、気体の運動方程式を満たすことができなくなります。実際には、物体の先端より少し手前の所に「不連続面」が形成され、超音速流が直に物体にぶつかることはありません。
物体が軸対称であると仮定して、その先端にぶつかってくる気体の流れを考えます。不連続面に到達するまでは、気体は、あたかも物体が存在しないかのように、一様に流れていますが、不連続面を横切るところで速度v
1(>c
1;c
1:不連続面の外側での音速)からv
2(<c
2)へと不連続に変化します。不連続面の内側では流速が音速以下になるので、気流は物体をよけるようになめらかに流れることができます。ここで、質量の保存則を満たすように、不連続面に流入する質量と流出する質量が等しくなければならないので、面の両側で密度と速度の積が等しくなります:
v
1ρ
1 = v
2ρ
2
この式からわかるように、不連続面を境にして密度も不連続に変化します。このほか、圧力や温度などの熱力学的な量も急激に変化します。この急激な変化が衝撃波の実体です。
「不連続面」は、厳密に言えば、ある厚さを持った遷移層と考えることができますが、この厚さは、気体分子運動の平均自由行程と同じオーダーになります。したがって、気体を連続的な媒質として扱う流体力学の範囲では、厚さのない面と考えてもかまいません。
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核分裂の際に放出される原子核1個あたりのエネルギーは、ウラン235、プルトニウム239ともほぼ200MeV(= 3.2×10
-11J)であり、差はあまりありません。原子爆弾の爆発力は、ウラン/プルトニウムといった核燃料の違いよりも、核分裂の効率をどれだけ高められるかに依存しています。プルトニウムの方がウランよりも核分裂のトリガーとなる低速中性子を吸収する割合が高く、1回の核分裂で放出する中性子数も多いので、連鎖反応が速やかに進行しますが、そのせいで、反応の早い段階で多くの核燃料が未反応のままバラバラに吹き飛ばされてしまい、なかなか強大な爆発力が得られません。爆縮を利用した起爆装置によって瞬間的に超臨界質量にする必要があり、これがうまくいかないと、かなりのプルトニウムが分裂せずに終わります。ウラン型爆弾では、ウラン238のように分裂せずに中性子を吸収して連鎖反応を阻害する物質がどの程度含まれているかによって、核分裂の効率が大きく左右されます。また、いずれのタイプでも、核燃料の形状・配置が重要になります。通常の原子爆弾では、核燃料の20%程度しか分裂しておらず、長崎に投下されたファットマンの場合、分裂効率はわずか1.4%でした。核分裂による原子爆弾の場合、ウラン型・プルトニウム型ともせいぜいTNT換算で数百キロトンが爆発力の実用上の限界だと言われています。
核兵器の威力には、爆発力の他に、投下後の放射能汚染があります。未反応のプルトニウムによる汚染は長期にわたる健康被害をもたらすため、比較的短期間で放射能を失う通常の核分裂生成物よりも恐ろしいかもしれません。
爆発力という点では、核兵器(核融合を利用した水素爆弾)を上回るものは、そうそう作れないでしょう(作れては困りますが)。これまでで最大の核兵器は、旧ソ連で製造された50メガトン爆弾だそうです。ただし、より危険な兵器となると、いろいろなものが考えられます。例えば、大量の放射性物質をばらまいて意図的に放射能汚染を引き起こすダーティボム(広い意味で核兵器に入れる人もいます)や、遺伝子操作技術で細菌やウィルスに強い伝染力と毒性を与えた生物兵器などが思い浮かびます。世の中には、兵器開発となるとやたらに創造力が旺盛になる学者がいるので、そうした人が危険な兵器を次々と考案していくでしょうが、実用化してほしくないものです。
【参考文献】sciencedaily.com - Encyclopedia
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ディーゼル車と環境の問題に関しては、
別の回答で書いていますが、簡単に言えば、ディーゼル車は、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出量が少ない──公表されているデータに差がありますが、平均で−20%程度か?──反面、窒素酸化物(NO
x)・粒子状物質(PM)の排出量が多くなります。地球温暖化を最も深刻な環境問題として捉えるヨーロッパで、新車販売の40%をディーゼル車が占めている一方、NO
x規制の厳しいカリフォルニア州やニューヨーク州では、ディーゼル車がほとんど販売できないといった状況になっています(自動車業界の力関係や課税制度も絡んでいます)。日本では、自動車NO
x・PM法(2001年制定)による規制の他、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県などがPMの基準に適合しないディーゼル車の都県内の運行を禁止する条例を制定しており、ディーゼル車に対する風当たりが強くなっています。しかし、低公害の次世代ディーゼル車も開発中であり、もう少し技術の進展を見る必要がありそうです。
天然ガスを燃料とする自動車(圧縮天然ガス自動車)の利用は、すでに始まっています。天然ガス自動車は、二酸化炭素の排出量がガソリン車よりも20〜30%程度少なく、NO
xやPMも大幅に低減されます。ただし、天然ガス・ステーションがごくわずかしかない(2004年現在、日本全国で300ヶ所以下)、ガソリン車に比べて価格が高い──などの理由から、まだ、2万台程度しか普及していません。
水素燃料電池自動車は、2002年にトヨタとホンダがリース用のものを発表していますが、製造コストが数千万円と極めて高く、常設の水素ステーションもないため、普及には時間が掛かりそうです。2010年頃から少しずつ販売台数が増えるものの、本格的に普及してガソリン車からの代替が進むのは、2020年以降になると予想されています。
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©Nobuo YOSHIDA