質問 先のイラク戦で米軍が使用したと言う「電磁波爆弾」について質問させていただきます。これまで私は、電磁波爆弾について、マグネトロンのようなものに電源がついたものか、圧電素子を火薬の爆発で圧縮するようなものかと思っていましたが、どうもこのページの最後の方を見ると違うようです。
  http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20030324302.html
これはどういうメカニズムによるのでしょうか?【その他】
回答
 電磁波爆弾の設計図などが発表されたわけではないので、詳しいことはわかりませんが、インターネット上でリサーチした限りでは、爆発力による磁束圧縮ジェネレータ(Explosively Pumped Flux Compression Generator; EPFCG)を利用しているようです。
 電磁波爆弾(E-bomb)とは、パルス幅が数十〜数百マイクロ秒のきわめて強力な単一パルスの電磁波によって、電気機器内部に数千ボルトの電圧を発生させて破壊する兵器です。こうした電磁波を作る方法としていくつかの技術が開発されていますが、最も簡単なのが、EPFCGによって瞬間的に大電流を流すというものです。
 ここで利用されるのが、良く知られている電磁誘導の法則です。磁場が加わっている場所に閉じた導線を置き、これを急激に変形してインダクタンスを小さくすることを考えましょう。このとき、閉回路を貫く磁束の変化を妨げる向きに起電力が発生し、回路内に電流が流れます。新たに加わった磁気的なエネルギーは、磁場から受ける力に抗して導線を変形させた外力によって供給されたものです。EPFCGは、この変形を爆発物によって瞬間的に行うものです。当然のことながら、装置は1回の使用で破壊されてしまいますが、構造が簡単で安く作れるので、問題にはなりません。
qa_225.gif  いくつかの文献によると、電磁波爆弾のEPFCGは、次のような円筒形の構造をしていると考えられます。まず、銅などでできた円筒状の容器があり、その内部に爆発物が充填されています。その周りには、一定の間隔を空けてヘリカルにコイルが巻かれており、一方の端にはコンデンサなどが接続されて電流が流せるようにしてあります。他方の端にはスイッチと電磁波発生器が並列に接続されています。
 使用する際には、コイルに流れる電流がピークに達する瞬間に、爆発物に点火します。ここで、爆発物の密度などを調節すれば、爆発面が適当なスピードで一方の端から他端へと伝播していきます。爆発面付近の銅容器は急激に膨張しますが、周辺にはコイル電流による磁場が存在するため、電磁誘導の法則に従って誘導起電力が発生します。銅容器はさらに変形してコイルと接触し、そこで形成される短い閉回路内部を、誘導起電力による強い電流が流れるようになります。このとき、爆発力による仕事が磁気的エネルギーに転換され、もともと容器とコイルの間にあった磁束は狭い回路の内側に圧縮されていきます。
 爆発が続くと、コイルも端から破壊されていき、それとともに、コイルのインダクタンス(巻数に比例する)が減少していきます。磁束Φがほぼ保たれているのにインダクタンスLが減るわけですから、Φ=Li の関係式に(いささか強引に)当てはめれば、この過程でも電流が増えていくことになります(この場合にも、コイルを変形する爆発力がエネルギーを供給しています)。こうして、爆発面が円筒容器の端近くに来る頃には、電流はきわめて巨大な(文献によれば数千万アンペア)値になります。その瞬間に、スイッチを開いて電磁波発生器に電流を流すと、パルス状の強大な電磁波が発射されるというわけです。
【参考文献】Carlo Kopp, 'The Electromagnetic Bomb ,' (http://www.globalsecurity.org/military/library/report/1996/apjemp.htm)ほか

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質問 四重極子モーメントって何ですか?【古典物理】
回答
 四重極(子)モーメント(四重極子または四重極モーメントと呼ぶ方が一般的です)は、物理学のさまざまな分野で現れますが、ここでは、最もわかりやすい電気四重極子について説明します。
qa_224.gif  電荷がある領域に閉じこめられているとき、そこから遠く隔たった場所で電位を測定することを考えましょう。閉じこめられている全電荷Qがゼロでない場合は、充分に遠い距離からは、大きさQの点電荷が領域内のある点(これを原点としましょう)に存在するように見えるはずです。したがって、閉じこめられた電荷が作る電位φは、近似的に、
  φ = Q/R (無限遠を電位の基準とする)
となります(R は電荷のある地点から観測点までの距離)。
 電荷の総和がゼロになるような場合は、電位に1/R に比例する項は現れず、遠方での電位は、たかだか1/R2でゼロになります。ここで、電荷がプラスの領域とマイナスの領域の2つに分かれるように偏って分布しているならば、電荷から充分に遠い距離で電位を観測すると、原点に大きさが無視できる電気双極子dが存在しているときと近似的に同じ電位が得られます(図(2))。電気双極子とは、長さLの短い棒の両端に +qと-qの電荷が付いた物体として表されるもので、大きさが d = qL 、向きが-qから+qの向きになるベクトル量です。多数の点電荷が分布している場合は、その電荷分布に対する電気双極子を、
  d = Σkqkrk
で定義します。電気双極子からRだけ離れた点の電位は、
  φ = dn/R2 (nは電荷から観測点を見た方位ベクトル)
となります。
 電荷がプラス・マイナスの2つの領域に分かれるように分布しておらず、上の式で定義される電気双極子の値がゼロになるケースでは、電位は1/R2より速くゼロになります。xy面上に図(3)のように(z軸に関して対称で全電荷がゼロになるように)電荷が分布している場合がそうで、このときは、電気双極子の次の近似を考える必要があります。ここで持ち出されるのが、次式で定義される電気四重極子です:
  Dμν = Σq(3xμxν - r2δμν) (和は電荷に対して取る)
遠方の電位は、近似的に、大きさのない電気四重極子が原点に存在する場合と一致します。電気四重極子で近似できる電荷分布は図(3)以外にもありますが、図(3)のときは、
  Dzz = -2Dxx = -2Dyy ≡ D
  Dxy = Dyz = Dzx = 0
となり、Dという1つの物理量で遠方の電位を表すことができます(このDを電気四重極子と呼ぶことがあります)。電荷から見た観測点の方位が、z軸に対して角度θをなすとき、観測される電位は、
  φ = D(3cos2θ - 1)/4R3
で与えられます。
 一般に、電荷が分布している領域から距離Rだけ離れている地点の電位φは、
  φ = φ(0) + φ(1) + φ(2) + …
のように多重極展開することができ、φ(0) 、 φ(1) 、 φ(2) がそれぞれ、点電荷、電気双極子、電気四重極子…からの電位に相当します。第n項の φ(n) は、充分に大きなRに対して 1/Rn+1 で減衰し、高次項はより低次の項に対する微小な補正となります。
 こうした多重極展開は、電荷の場合だけではなく、特定の領域内に局在しているソースからの影響を遠方で観測する場合に、一般的に成立するもので、磁気の場合には、(磁荷は存在せず)磁気双極子、磁気四重極子…からの寄与として計算することができます。

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質問 人間は言葉によって、さまざまなことを語ります。しかし、なぜ言葉を使用する事が出来るのかを、自ら語ることは出来ません。脳科学から視点から見た人間の言語を操る能力について、教えてもらえないでしょうか?【その他】
回答
 言語は、地球上では人類だけが使用するものであり、比較対象がなく研究の足がかりが得られないという問題がありました。しかし、ここ十数年の間に、新たな手法による実験データが蓄積され、現代的な言語学が構築されつつあります。
 人間的な言語の特徴は、指示内容を持った単語が、機能詞の付加や統語論的変形を介して連結され、文を構成するという点にあります。霊長類の中には、警告などかなりはっきりした意図を持つ吼え声を上げるものがいますが、こうした吼え声は、連結されていない単一のシグナルでしかないのです。例えば、「ウォー」という吼え声が「ヒョウ(がいる)」、「カー」が「エサ(がある)」ことを意味するシグナルだったとしても、これだけでは言語としての基準を満たしていません。日本語の「ない」に相当する一般的な否定詞(「キー」としましょう)を付加した「ウォー・キー」(=「ヒョウがいない」)、「カー・キー」(=「エサがない」)なる表現ができて、はじめて文を生み出したと言えるのです。さらに、疑問詞の付加や語順の入れ替え(疑問変形)によって疑問文を作れるならば、人間的な言語を操っていると見なすことができます。人間に飼育されているチンパンジーやボノボ(ピグミーチンパンジー)に言葉を教える試みがなされており、かなりの成果を上げているとも言われますが、彼らが否定詞などを使いこなせているかは疑問です。
 シーケンシャルに構成された文を生成する能力に関連して、近年、注目を集めているのが、大脳基底核の機能です。大脳半球の深部に位置する大脳基底核は、要素的な運動を組み合わせて一連の行為にまとめ上げる際に重要な役割を果たしており、この領域に障害があると、例えば、「コップを掴む」「口元に持ってくる」「傾けて水を口に流し込む」「口の中の水を飲み込む」といった個々の動作はできるのに、これらをまとめてスムーズに水を飲むことが困難になります。発話の際にが、咽頭・舌・唇・顎などの動作を調整しながら言葉を声に出さなければならず、大脳基底核による制御が必要なことは想像に難くありませんが、それだけではなく、単語を組み合わせたり変形したりしながら1つの文を作っていく段階でも、この部位が重要な役割を示していることが示唆されています。認知科学者のピンカーは、大脳基底核に障害のあるパーキンソン病の患者が、運動機能や平衡感覚の狂いに加えて、動詞を過去形に正しく変形できないといった文法能力の異常を示すことを報告しています。興味深いことに、この患者は、'go - went' のように過去形を思い出すことが要求される不規則動詞よりも、ただ 'ed' を付け加えるだけの規則動詞の方に困難を示しており、文法的な変形を行う際に大脳基底核が関与していることを伺わせます。ただし、大脳基底核が具体的にどのような役割を果たしているかについては、まだ、ほとんどわかっていません。
 本来は運動の制御を行うための器官である大脳基底核が、言語活動に深くかかわっていることは、「運動に関わる脳の部位が言語能力においても重要な役割を果たしている」という一般論の1つの実例と考えられます。言語能力の根底にあるのは、身振りや表情と同列に並べるべき「制御された身体運動」であり、哲学者が好む「内的思考」や「純粋思弁」ではないでしょう。このことを実証するのが、他者の指の動きや表情を模倣するときに興奮する脳の部位が、言語処理を行うブロカ野やウェルニケ野とかなりの部分で重なっているという事実です(fMRIを用いた実験より)。発話は、他者を真似しながら身に付ける身体的な技術であり、これに習熟しスムーズな発話ができるようになる過程で、複雑な文法的構造を持つ文を作り上げる能力が開発されるのです。
【参考文献】C.Holden 'The Origin of Speech', (Science 303(2004)1316)

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質問 日本はグリーン税制適合の環境に優しい車であふれていますが、将来、これによって地球の温度は下がるでしょうか?【その他】
回答
 自動車のグリーン税制とは、環境負荷の小さい車に対して、自動車税・自動車取得税を軽減するというものです。環境負荷に関する評価は、有害物質の排出量と燃費で行っており、例えば、2010年燃費基準(達成すべき目標として1999年に制定された基準)を満たし、かつ、有害物質(NOx、炭化水素)を2005年度基準値より75%以上低減させた車の場合は、「自動車税を概ね25%軽減する」などとなっています。
 地球温暖化に関わるのは主に燃費ですが、2010年燃費基準は、それほど厳しいものではありません。車両重量828〜1016kgのガソリン車ではリットル当たり17.9km ですが、基準が定められた1999年時点の平均燃費は 16.7km/L(国土交通省のホームページより)であり、少なからぬ車種ですでに達成できていた値です。アメリカ製の燃費の悪い車を切り替えていくならば二酸化炭素排出削減の効果は大きいかもしれませんが、すでにそこそこ燃費の良い車を使っていた人が、新車購入の際にグリーン税制適合車を選んだとしても、あまり効果はありません。車輌製造の際にもエネルギー消費に伴って二酸化炭素が排出されるわけですから、優遇措置を受けようとして積極的に買い換えたとすれば、むしろ逆効果だとも言えます。プリウスやインサイトなど 35km/L 以上の高燃費を実現しているハイブリッド車が普及すれば、二酸化炭素の排出抑制につながりますが、一般市民が購入するにはやや高価であり、国内台数が1000万台を越えるのは2010年代後半になると見られています(ハイブリッド車の燃費は、実際に公道を走る場合、上の公称値よりかなり悪くなるという声もあります)。
 日本の場合、二酸化炭素排出量40%を占める産業部門では、排出量の抑制が多少なりとも進められていますが、同じく20%(その90%近くは自動車から)を占める運輸部門では、1990年度に比べて2001年度の排出量は22.8%増となっており、2010年度に1990年度比で17%増という目標を大幅に上回ることになりそうです。これは、自動車の保有台数そのものが大幅に増えたためであり、燃費の向上は、それに追いついていません。本気で地球温暖化を防ごうと思うならば、2010年燃費基準より遥かに厳しい基準の導入、バス(できれば天然ガス車のような低公害車)などの公共交通の利用促進、貨物輸送における鉄道・船舶の役割拡大、乗り入れ規制などによる渋滞の解消といった基本的な施策に加えて、自動車文明そのものを見直し、歩行者と自転車を優遇する街作りを進めることが必要です。

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質問 私は今、物理学を勉強していますが、元素が生成していく詳しいプロセスに興味があります。核図表の左下から、どのようにして原子核がつくられていったのですか? 恒星内部や超新星爆発で元素が出来ていく様子を、順を追って解説していただけると嬉しいのですが…。また、魔法数についても1から教えてください。【現代物理】
回答
 元素の生成に関しては、宇宙存在度の質問に対する回答でも説明していますので、ここでは、魔法数(マジックナンバー)の解説を加えた補足的な内容にとどめておきます。
 陽子と中性子は核力によって結びつけられて原子核を形作っていますが、安定な(固く結びついて壊れない)原子核を作る陽子・中性子の個数は、特定の値に限られています。例えば、陽子2個・中性子2個から出来ているヘリウム4が、きわめて安定な原子核であるのに対して、陽子2個・中性子3個、あるいは、陽子3個・中性子2個という組み合わせでは、原子核としてまとまっていられません。原子核が安定する理由はかなり複雑ですが、大雑把に言うと、次のようになります:  原子核は正の電荷を帯びており、クーロン力によって互いに反発しあっているため、高速で衝突させないと原子核同士の融合は起きません。宇宙の歴史において、原子核が頻繁に高速で衝突するような高温・高密度の条件が揃うのは、次の3つの場合です:
(1) ビッグバン : 宇宙が始まった直後は、陽子や中性子が単独で存在していましたが、ビッグバンの高温・高密度状態の中で互いに衝突する過程で、重水素・ヘリウム3・ヘリウム4などが生成されました。こうした元素生成は、宇宙が始まった最初の数分間に起きたと考えられています。しかし、陽子・中性子あわせて5個の安定な原子核が存在しないため、ヘリウムより重い原子核はなかなか作ることができず、そうこうしているうちに、宇宙が膨張して温度・密度ともに低下したため、ほんのわずかのリチウムが生成されただけで、元素生成はストップしました。
(2) 恒星の中心部 : 星間物質が凝集して質量が充分に大きな天体を作ると、その中心部は高温・高密度状態になり、再び核融合が始まります。主系列星では、主に、水素同士の衝突によってヘリウム4が生成されます(リチウム、ベリリウム、ホウ素などもわずかにできます)。燃料となる水素が消費し尽くされると、恒星は主系列を離れて巨星となりますが、その過程で中心部の温度・密度が上昇し、それまであまり起きなかったヘリウムの核融合が進行するようになります。まず、2つのヘリウム4が融合して不安定なベリリウム8が一時的に形成され、このベリリウムとヘリウムが融合して炭素が、炭素とヘリウムが融合して酸素が、酸素とヘリウムが融合してネオンが生成されます。
  4He + 4He ←→ 8Be, 8Be + 4He → 12C, 12C + 4He → 16O …など
ヘリウム反応が終わると、今後は、炭素同士、酸素同士の融合によってマグネシウム、ケイ素、イオウなどが作られていきます。
  12C + 12C → 24Mg, 16O + 16O → 28Si + 4He …など
こうした核融合は、最終的に鉄が作られるまで続きます。鉄は原子核の構成粒子1個当たりのエネルギーが最も低い元素であり、エネルギーの供給なしに核融合を進めることができないので、鉄より重い元素は(高温の天体内部で中性子捕獲によってわずかに生成されるケースを除けば)恒星の燃焼過程ではほとんど作られません。
(3) 超新星爆発 : 超新星は、恒星がその生涯を終えるときに起こす大爆発であり、このときの高温状態の中で、鉄より重い元素が作られていきます。まず、超新星爆発の際に、星の中心部で鉄の原子核が分解され、多量の中性子が放出されます。中性子はクーロン斥力を受けないので、周りを取り囲んでいる物質の原子核にぶつかると、そのまま吸収されて中性子過剰核を作り、その後、ベータ崩壊によって原子番号が1つ大きい元素に変わります。このプロセスを繰り返すことにより、ウランやラドンなどの恒星内部では作られない重い元素が次々と生成され、最終的には、爆発によって宇宙空間に放出されたのです。

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質問 家電製品でマイナスイオンを発生するものがありますが、何のマイナスイオンなのでしょうか。また、マイナスイオンの放出はあんなに簡単な機械でできるのでしょうか。【その他】
回答
 数年前から、健康関連グッズなどのカタログで、「マイナスイオン」という言葉をよく目にします。イオンというと、通常は、原子・分子が電子を放出または獲得して電荷を持ったものを指しますが、大気科学の分野では、もう少し広く、大気中の電気的現象に関与する帯電した浮遊粒子を総じて(空気)イオンと呼んでいます。巷で語られているマイナスイオンが何を意味するかはよくわかりませんが、インターネット上で調べた範囲では、どうやら、何らかの陰イオン(OH-?O2-?)を含むことによって負に帯電した水の微粒子のことのようです。ちなみに、英語に "minus ion" という言い回しはありません。"negative ion" という表現ならありますが、「マイナスイオン」とは必ずしも一致しません。自然界では、紫外線・放射線によるイオン化やレナード効果(障害物に衝突した噴水流が負に帯電した水の微粒子を発生させる効果)によって、(この意味での)マイナスイオンが生成されると考えられます。
 最近では、こうしたマイナスイオンを放出すると謳われているエアコン・空気清浄機・加湿器・ヘアドライヤーなどが市販されています。メーカのカタログを見ると、いくつかのマイナスイオン発生機構が説明されています。1つの方式は、コロナ放電によって空気中の酸素をイオン化して作るというもので、放電の際に生成されるイオンを電場で分離して陰イオンだけ放出し、これを核に水蒸気を凝集させマイナスイオンを生成するようです(同時に有毒なオゾンが発生している場合があります)。また、水を噴出させレナード効果を利用してマイナスイオンを作ると謳っている装置もあります。確かに、こうした装置を使えば、負電荷を帯びた水の微粒子を作ることは可能でしょう。ただし、エネルギーの供給なしにトルマリン(電気石)だけでマイナスイオンを作ることはできません。
 もっとも、「マイナスイオンを作って何になるのか」という基本的な疑問は残ります。敢えて言えば、毛髪がプラスに帯電すると髪のまとまりが悪くなるので、それを中和するために、マイナスイオンを発生するヘアドライヤーが有効に作用することはあり得ます。それ以外のマイナスイオン発生器については、健康増進などに関する確実なデータはないため、何のメリットも期待しない方が良いでしょう。

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©Nobuo YOSHIDA